スーパーマーケットや百貨店、コンビニエンスストアといった流通業界で働く人などの労働組合で作る『UAゼンセン』が行った、サービス業における実態調査によると、7割もの人が客からの迷惑行為を被ったことがあると回答したそうです。
報道によると、迷惑行為の内容として、「暴言」、「同じ内容を繰り返す」、「説教など権威的態度」、「セクシュアルハラスメントを受けた」などがあるようですが、どのような違法行為に当たるのかみてみましょう。
■迷惑行為は罪になるのか
「暴言」、「同じ内容を繰り返す」、「説教など権威的態度」については、行為態様などにもよりますが、これをされることが不快ではあるでしょうが、何かしら罪に直ちに当たるとすることは難しいでしょう。
もっとも、これらの行為を継続的に行うことで、対応している人が長時間通常の業務をすることができなくなっている状況が発生しているようであれば、業務妨害罪が成立する余地があります。
他方、セクハラは、これも具体的な行為態様にもよりますが、強制わいせつ罪に当たる可能性があります。
■たとえば、次のような行為は?
報道では、「2時間にわたって正座させられた」といった被害に遭った方が紹介されていました。
命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせた場合には、強要罪になりますが、本来、店員は客から正座を要求されるいわれはありません。
そして、2時間という長時間にわたって正座をさせられるという状況は、何らかの加害が加えられる可能性を考慮しているものと思われます。したがって、正座を強要される態様によりますが、強要罪が成立する可能性があります。
コンビニ等で、土下座を強要したことをもって逮捕されている事案は比較的ありますが、これと似たように考えることができるでしょう。
また、「(要求を)聞いてくれないならインターネットの掲示板に個人名を出して投稿することもできるんだ」と言われたという例も紹介されていましたが、これは自由、名誉に対して加害の告知をしているといえることから、脅迫罪が成立する可能性があります。
さらに、「酔っている客から横腹を殴られた」という例も紹介されています。これは暴行罪に該当するものであり、仮にこれによって怪我をしてしまった場合には、傷害罪が成立することになります。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
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