9月8日、兵庫県の警察官が、県公安委員会に無断で横断歩道やはみ出し禁止線を設置したとして虚偽公文書作成・同行使と道交法違反で書類送検されました。
調べによるとこの警察官は平成27年7月から今年4月にかけて県公安委員会の許可を得ていたかのように文書を作成し、上司に提出。兵庫県相生町など9箇所に、横断歩道やはみだし禁止線などを設置していました。
この警察官は停職一ヶ月の処分を受け、依願退職したそうです。
■一般人が標識を落書き・破壊・移動したらどうなる?
神戸の事件は他の地域に住む方にとっては無縁ですが、道路標識に落書きをする、壊す、移動するなどの行為は「起こりうること」です。
仮にこのようなことをした場合、どのような罪に問われるのでしょうか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。
「道路標識も国や自治体が所有し、管理をする器物であり、いたずら書きや故意に破損させることで、その本来的な効用である交通ルールの表示機能を毀損することになりかねません。そのようないたずら書きや故意の破損は、器物損壊罪(刑法261条)が成立する可能性があります。
また、具体的な破損等がなかったとしても、標識を勝手に移設し、それによって標識の効用を妨げたといえるような場合には、同様に器物損壊罪が成立する可能性があるものと考えられます。
それに加え、道路標識を破損し、又は移設したことによって交通の危険が生じた場合には、道路交通法115条に違反することになります。
器物損壊罪の法定刑は3年以下の懲役又は30万年以下の罰金若しくは科料、道路交通法115条違反の法定刑は5年以下の懲役又は20万円以下の罰金と、決して軽いものではありません。
ただし、これらの罪は故意に行われた場合にのみ成立するものですので、不注意などの過失で破損してしまった場合には成立しないとされています」(大達弁護士)
■故意ではなくても警察には報告を
同じく大達弁護士にお話を伺うと、
「自動車を運転していて標識にぶつけて破損してしまった、というような場合において、これを警察等に報告しなかった場合には、いわゆる“当て逃げ”として、道路における危険を生じさせた場合には1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科せられる可能性があります(道路交通法117条の5第1号、同72条1項前段)。
危険を生じさせていなくとも、警察への報告をしていなかった場合には3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科される可能性があるので注意が必要です(道路交通法119条1項10号、同72条1項後段)。
なお、道路標識の設置方法に問題があるような場合で、移設を希望する場合には、警察署や役所へ相談すると対応してくれる可能性がありますので、まずは最寄りの役所や警察署に相談をするようにし、勝手に移動して罪に問われるということのないよう注意して下さい。
標識は道路利用者への道しるべ。それを勝手にいじることは利用者を誤った方向に導きかねず、そこにはもっと重大な結果が生じてしまうリスクがあり得ます。自分の人生の道しるべをも見失ってしまわないように、標識はそのルールも標識自体もきっちり守りましょう」(大達弁護士)
標識への落書き・破壊・移設は立派な犯罪。行わないようにしましょう。
*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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