先日婚約を発表した女性キャスターのお相手に、複数の婚外子がいることが判明。すでに認知をしているそうですが、その振る舞いについては疑問や批判の声があがっています。
女性キャスターの婚約者も該当するのですが、芸能人など莫大な経済力を持つ男性には「隠し子」が存在しがち。
生前本妻の家族に隠し子の存在を文字通り隠し続け、亡くなったあとにひょっこりと姿を現し、「子どもだから遺産を分けて欲しい」と名乗り出ることがあります。
本妻側としては、青天の霹靂で、かなり納得がいかず「一銭もやりたくない」と思うもの。法律的に見て、突然名乗り出てきた隠し子に対し遺産を支払う必要性はあるのでしょうか?
エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。
■突然遺産相続を名乗り出てきた「隠し子」に支払う義務はある?
「どんな方にも避けられないが死というものですが、親が亡くなったことで生じる様々な人間模様は、まさに事実は小説よりも奇なりを地でいくものといえるでしょう。
亡くなった親に“隠し子”というのもまさにその一つ。実は自分に腹違いの兄弟が、という場面は弁護士業務では珍しくなかったりもします。
さてそんな“隠し子”がいて、遺産相続を名乗り出た場合の遺産の分配ですが、端的にいえばその方も立派な相続人のひとりであり、相続権を持つのが原則です。
しかし、相続権を持っているのは法律上の親子関係まで有している必要があります。
この点、婚姻関係にある男女の間で生まれた子については、原則として法律上の親子関係があるものと推定されますが(民法772条1項)、婚姻後200日以内に生まれた子や、婚姻解消後300日経過後に生まれた子、さらには婚姻関係にない男女から生まれた子については嫡出推定の恩恵を受けず、別途法律上の親子関係を発生させる認知の手続きをとる必要があります。
そのため、仮にたとえば亡父との間に親子関係があることが明確であっても、自分の母親との間の関係上、嫡出推定を受けず、認知も受けていない場合には相続権はないことになります。
ただし、その場合、子として、父の死後3年以内に認知の訴えを提起することで、父の死亡後でも認知の効果を得ることができます(民法787条)。
なお、かつては法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子を嫡出でない子として、嫡出子に比べて相続分が2分の1とされておりましたが、平成25年9月4日、最高裁により意見である決定が出されたため、それを受けて民法900条4号が改正され、嫡出・非嫡出問わず、相続分は平等として扱われることになりました。
そのため、ご質問に対する回答としては、“隠し子”もいち相続人として、平等な相続権を有するため、遺産分割協議等によって相続分を定めることが必要になります。
余談にはなりますが、実際上、父の死亡時において認知などによって亡父と隠し子の間に法律上の親子関係が発生していることが戸籍等から明確になっていれば、実際の銀行口座名義の変更等においては亡父の出生時から死亡時までの戸籍謄本の提示が求められることが通常で、それを取得する際に、隠し子の存在が明らかになることが多いです。
このような場合、隠し子とされる本人ですら、相続が発生したあとに連絡を受け、自身の実親の存在を知るということも少なくありません。
もとの家族からすれば唐突にきょうだいが現れたということで戸惑うこともあるかもしれませんが、きょうだいが増えたことを前向きにとらえられるような日が訪れるといいですね」(大達弁護士)
「隠し子」は、レアケースのようにも思えますが、弁護士業務では比較的珍しくない話なのだそう。仮に遺産相続の際にそのようなことに遭遇した場合は、専門の弁護士に相談すると、明確な答えを出してくれることでしょう。
*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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