新規開設したキュレーションサイトや、個人ブログ、クラウドソーシングでクライアントに提出する原稿――数をこなして、てっとり早くアクセスや賃金を稼ぐのに用いられているのが、他人の書いたWEB記事の無断コピペ流用です。
ネットの記事はもちろん、ライターが撮影した写真までマルパクするのに、ほんの10秒もかかりません。
デジタルの世界ではこのコピペが簡単なので、ふだん企業が開設している商業サイトに記事を提供しているプロライターが、ある日、自分の記事が丸ごとコピーされているのを知って仰天することが多々あります。
提携先に転載されることはあっても、記名と出典元は明らかにされていますが、出典元はなく、記名も替えられていた時はどうすればいいでしょうか?
著作権問題に詳しい、パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に対応方法をお訊きしました。
■明確な著作権の侵害! 記事の差し止めを請求
「無断でブログに記事を転載(盗用)してネットユーザーに閲覧させることは、記事という「言語の著作物」(著作権法10条1項1号)の著作権(より具体的には送信可能化権・公衆送信権。著作権法23条1項)を侵害する行為ですから、元の記事の著作権を有する者が差止め(削除)請求することができます」(櫻町弁護士)
元の記事が商業サイトの中で掲載されており、記事執筆者が著作権をサイト運営者に譲渡している場合は、サイト運営者が著作権者として差し止め請求の主体となるそうです。プロライターが記事執筆の対価を得ている場合、こうした契約になっている場合がほとんどでしょう。
では個人の記事がマルっとコピペされていた場合はというと、個人が著作権者となります。
こういった場合、請求先はどこになるのでしょうか?
「請求先は、個人ブログなら盗用したブログ主個人と、ブログサービスを提供している会社の双方が考えられます。連絡先が記載されていない個人ブログもありますので、そのような場合にはブログサービスを提供している会社に請求することになるでしょう。」(櫻町弁護士)
■相手が個人なら個人とブログサービス提供会社へ通告!
ブログサービスを提供している会社への通告には、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が策定、公表している『著作物等の送信を防止する措置の申出について』を用いると手続きがスムーズになる場合があるということなので、活用をお薦めします(会社によって書式への記載例を掲載している場合もあります)。
「その際、自分が著作権者であることを示すための資料として、元の記事が掲載されている画面のキャプチャ(URLや掲載日なども分かる形)を印刷したものと、著作権侵害がされていることを示すための資料として、盗用された記事が掲載されている画面のキャプチャ(こちらもURL等が分かる形)を印刷したものも、あわせて送付するのがよいでしょう」(櫻町弁護士)
■著作権侵害の罰則は意外に重い
ところで、この丸ごと盗用ですが、どんな罪に問われるのでしょうか?
「著作権の侵害には罰則が規定されており、今回のケースのような著作権侵害の場合は“10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科”(著作権法119条1項)と、かなり重い刑罰が科せられる可能性があります。
また、実際に逮捕されている例もあり、軽い気持ちで著作物を盗用すると、想像以上に重い罪になる可能性があると考えたほうがいいでしょう」(櫻町弁護士)
コピペの作業自体があまりにも簡単なので、刑も軽いと思ったら大間違いなのです。
次ページ果たして慰謝料は請求可能…?
- 1
- 2