長年人々の足として利用されている原付バイク。男性なら、高校生くらいになるとまず原付の免許をとり、道路でスピード感溢れる走りを体感したのち、本格的な「単車」に乗り換えたという人も多いことでしょう。
最近は若者のバイク離れが進んでおり、原付も苦戦。販売台数減少に各社が悩むなか、生き残りをかけて2大メーカーのヤマハ発動機とHONDAが提携を発表するなど、かなり厳しい状況に置かれているようです。
全体的にみれば販売台数は減っているようですが、都市部を中心に通勤に使っている人も多く、やはり便利なもの。その特徴は渋滞もスイスイと抜けることができるなど、動きが身軽ということ。
しかし、その身軽さゆえ、「それって違反じゃないの?」というような運転をする様子を見ることもあります。よく見かけるのが、エンジンを切って乗ったまま歩道を走るケース。「あれ、いいのかな?」と思ってしまいます。
また、同じような事例として車両通行禁止区域でエンジンを切りそのまま坂の傾斜を利用して駆け下りることもあります。この行為は「問題なし」と考えている人もいるようですが、法的にどうなのでしょう?
エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。
Q.車両通行禁止の道路で原付バイクのエンジンを切り坂を下りる行為は道交法違反ですか?
A.違反です
「車両通行止め区間、つまり道路標識又は道路標示によって車両通行が禁止されている区間で原付バイクに乗ることは、たとえエンジンを切っていたとしても運転していることになり、道路交通法に違反すると考えられます。
ここでいう“車両”とは、“自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバス”のことをいいます(道路交通法2条1項8号)。また、“運転”とは、“道路において、車両又は路面電車をその本来の用い方に従って用いること”をいいます(道路交通法2条1項17号)。
このとき、エンジンがかかっていない場合には、原付バイクの“本来の用い方”には当たらないようにも思えます。しかし、そもそも、道路交通法では、“歩行者”に関連する別の定義がされています。
つまり、エンジンを切った上で、手で押しながら通行する場合には歩行者とするとされているため(道路交通法2条3項2号)、その反対解釈としてはエンジンを切った上で“手で押していない”ような場合には、歩行者とみなされないことになると思われます。
そうすると、仮にエンジンを切った場合であっても、手で押していない場合であれば、エンジンをかけずに坂道を下ることも、“運転”に当たる可能性が高いと考えられます。
そして、車両通行止め区間では、基本的に歩行者以外の通行ができないため(道路交通法8条1項)、運転をした場合には、道路交通法119条1項1号の2に違反し、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が科される可能性がありますので、くれぐれも道路標識等を守って楽しく安全な原付運転生活を送りましょう」(大達弁護士)
意外と間違いやすいエンジンを切った状態での原付バイクの扱い。エンジンを切っていたとしても、乗車した状態で車両通行禁止区域を走行すれば違反にあたるそうです。どうしても通行したい場合は、バイクを降り手で押しながら歩くようにしましょう
*取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)
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*notkoo / PIXTA(ピクスタ)
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