タクシー運転手に「とにかく急いで!」結果、スピード違反で捕まった…法的責任は誰に?

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師走に入って仕事の追い込みもあり、急いで移動しないといけないビジネスパーソンも多いと思います。

そんな移動時にタクシー乗車を選択し、運転手に「とにかく急いで」と指示したところ、タクシーがスピード違反で捕まってしまった…。指示をした乗客は何らかの法的責任を負うのでしょうか。

 

Q.スピード違反の処罰対象はタクシー運転手だけ?

A.急ぐ指示をした乗客も指示の仕方によっては「教唆犯」として処罰される可能性アリ。

スピード違反は、道路交通法に違反する犯罪行為(速度違反)にあたります。そして、刑法上、他人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせた場合、「教唆犯」として処罰されることがあります。

ここで、他人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせる手段は問われません。つまり、乗客がタクシーの運転手にスピード違反を唆した場合、運転手は速度違反の「正犯」として処罰され、乗客は「教唆犯」として運転手と同じ処罰を受けることになります。

もっとも、単に乗客がタクシーの運転手に「急いでくれ」と指示しただけで、直ちに乗客が責任を負うことにはなりません。“最高速度を超えない範囲で急いでほしい”というつもりで、運転手にこのような指示をすることが考えられるからです。

これに対し、ストレートに「スピード違反をしろ」と指示した場合や、「無謀な運転をしろ」と命令した場合など、運転手が速度違反を犯すことについて積極的な立場を取っていた場合には、「教唆犯」として乗客も処罰を受ける可能性があります。

 

Q.乗客はタクシー運賃を支払う義務はある?

A.捕まった場所が目的地でない場合、支払い義務は発生しない。

まず、乗客がタクシーに乗り込み、行き先を告げて運転手が了承した段階で、タクシー会社と乗客との間で、「旅客運送契約」という契約が成立していると考えられます。この「旅客運送契約」の内容は、「乗客が指定した場所まで運転手が乗客を安全に運び、それに対する運賃を乗客が支払う」という内容であると考えられます。

そうすると、タクシーが途中で事故に遭ったり、運転手が警察に逮捕されたりした場合、タクシー会社は「乗客を指定された場所まで運ぶ」という債務の本旨に従った履行をしていないことになります。よって、今回のようにスピード違反で捕まり、乗客の指定場所まで運べなかったケースでは、乗客は運賃を支払う義務がなくなると考えられます。

 

なお、「旅客運送契約」には、「運転手は目的地まで合理的な経路を選択する」という内容も含まれていると考えられるため、タクシーが遠回りしたことによって運賃が増えた場合、乗客は余計に発生した分の運賃について支払う義務はないと考えられます。

もっとも、タクシーの運転手の選択した経路が合理的といえるか否かは難しい問題です。道路工事等により迂回する必要がある場合や、乗客の指示により結果的に遠回りしてしまった場合は、運転手に責任はないといえますし、複数の経路がある場合に最短距離を通らなかったからといって、直ちに合理的な経路ではないとはいえないと考えられます。

合理的な経路ではないといえるためには、運転手がわざと遠回りした場合や、乗客の指示に従わなかったなど、運転手の不注意が明らかな場合に限られると考えられます。

 

 

*著者:弁護士 鈴木翔太 弁護士法人 鈴木総合法律事務所

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鈴木 翔太 すずきしょうた

弁護士法人 鈴木総合法律事務所

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