12月3日、愛知県豊川市のマンションで職務質問を受けていた男性がそのまま飛び降り死亡するという事件が発生しました。
警察官は同マンションに住む女性からストーカー行為の相談を受けていたため警戒にあたっていたそう。不審な男性と判断したため、職務質問し任意同行を求めたところ、飛び降りたそうです。警察は、正当な職務だったと話しています。
職務質問は犯罪を防止するために警察官職務執行法によって認められた警察の権利です。「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足る相当な理由のある者」、「既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」に対し質問することができます。
必要性は理解しているものの、受ける側としては不愉快極まりなく感じます。かなり高圧的に質問されることも多いうえ、「任意ですから断ります」と突っぱねると怪しまれ、なかなか返してくれないこともあります。
面倒くさいから立ち去ることも可能なはずですが、警察官が腕を絡めて「逃がさなくする」こともあるようです。あくまでも任意であればこのような行為は違法なはずですが、実際のところどうなのでしょうか?
Q.「腕に手をかけて呼び止める」は職務質問で許される?
A.職務質問の要件が揃っていれば許される
警察官職務執行法2条1項に規定されている、職務質問の要件が揃っている場合には、仮に犯罪への関与が明確とまではいえなくとも、警察官は逃走しようとした人間の腕に手をかけて呼び止めることができます。
条文上、「停止させて質問することができる」とされているため、「停止」させる行為として不相当でない限りは、多少の実力行使も許されるとされています。納得できない人もいるかもしれませんが、逃げた者に対して何もできないというのでは、職務質問の実効性に欠けるため、やむを得ないと言えるでしょう。
しかし、最近は警察官絡みの事件も多く、後に違法と認定された職務質問があるのも事実です。自分に後ろめたいものが一切なく、不当であると感じた場合は警官の言いなりにはならず、拒否するところは拒否すべき場面もあると思います。
もっとも、職務質問を拒否することで、嫌疑をかけられるリスクは増すことになりますので、早々に終わらせたければ、むしろ素直に応じたほうが早く終わる場合が多いでしょう。
なお、違法不当な職務質問に対して、スマートフォンのムービーなどで動かぬ証拠をとっておくのも有効。後に抗議をしたり、裁判で違法性を争う場合などで役立ちます。自分の身は自分の身で守るしかないのです。
*記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:佐藤俊治(複数メディアで執筆中のフリーライター。真面目な話題からくだけた話題まで手広く記事を執筆中。趣味は将棋、好物はカツカレーとパインアメ。)
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