11月30日、モデルの押切もえさんの電子メールのサーバーに不正接続したなどとして、日本経済新聞社デジタル編成局の男性社員が、不正アクセス禁止法違反と私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕されました。
このようなサイバー犯罪も近年では目立つようになってきましたが、一方で飲食店などの従業員が有名人の来店情報やその有名人の住所を入手したことをSNSなどで拡散してしまい、その従業員の勤め先が対応に追われるといった事件も後を絶ちません。
とはいえ、家族に対してはつい気が緩んで、業務上知った秘密を話してしまう人は実際には多いのではないでしょうか。そこで、今回は、業務上知った秘密や個人情報を家族に話すのはNGなのか等について解説したいと思います。
■そもそも個人情報の社外持出しは絶対ダメ
金融機関はもちろん、一般的な会社では、個人情報を社外へ持ち出すことを禁止し、守秘義務に関する誓約書を従業員に提出させることが一般的ですから、母親の行為は守秘義務(契約)違反に当たります。
そして、守秘義務違反を行った従業員は懲戒や損害賠償請求の対象になりますので、安易な気持ちで個人情報を社外に持ち出すことは絶対にやめましょう。
■家族に有名人の来店情報を知らせるのもダメなの?
業務中に有名人が来店したことを不特定多数の第三者に知らせるのは何となくアウトな気がする人も、家族に対しては気が緩んでしまうと思います。
公開ロケ等で有名人が来店していた場合であれば、帰宅後に家族に対してこれを話しても違法となることはならないでしょう。
しかし、有名人がプライベートで来店していた場合、その情報は業務上知り得た秘密に当たり得るため、厳密には家族に対して話すことも禁止されます。
また、そもそも業務中に来店情報を電話やLINE、SNSで家族に知らせることは、労働者の職務専念義務違反に当たることが多いです。
したがって、家族に有名人の来店情報を知らせることは、場合によっては懲戒や損害賠償請求の対象になり得ますので、原則として行わないほうがよいです。
■家族から聞いた来店情報や個人情報をSNSに流すことはどうか?
「今日の10時くらいにお母さんが働いている○○銀行△△支店に、●●●●が美人と一緒に来てたんだって! うちも見たかった(ToT)」というようなことをSNSに投稿した場合は、理屈としてはプライバシー侵害に当たり、損害賠償請求の対象になります。
ここで、プライバシー侵害に当たるか否かのポイントは、(1)プライベートでの来店か、(2)その情報は一般的に人に知られたくない類のものか、(3)一般的に知られている情報かという点にあります。
上記の例でいうと、イケメン俳優の●●●●であれば美人と一緒に行動することは珍しくないかもしれません。しかし、場所が銀行なだけにプライベートの来店である可能性が高く、また、●●●●は結婚しておらず彼女もいないことになっているので一般的には知られたくない情報といえましょう。
なお、ここで挙げた例はフィクションであり、実在する人物とは一切関係がありません。
プライバシー侵害になるかどうかは判断が難しいですので、自慢したくなる気持ちを抑え、家族から聞いた来店情報や個人情報についてはSNSに投稿しないほうがいいでしょう。
以上のように、たとえ家族であっても業務上知った秘密や個人情報を話したり、家族から聞いた情報を不特定多数に拡散したりすると思わぬ不利益を受けることがありますので、秘密や個人情報は誰にも漏らさないほうが安全です。
*この記事は2015年6月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)
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*チータン / PIXTA(ピクスタ)
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