京都で刃物を持った男に5発「発砲」…警察官の発砲はどんな時認められる?

11月29日の午後7時10分ごろ、京都市内の住宅街で、母親と一緒にいた男児がナイフを持った男に襲われるという事件がありました。駆け付けた京都府警北署員が、男にナイフを捨てるように警告しましたが、従わず、ナイフを持ったまま向かってきたため、威嚇射撃を含む5発を発砲し、4発はナイフを持った男に命中しました。

署員の発砲に関して、横田政幸副署長は「現時点では適正な拳銃の使用だったと考えている」と話しているようですが、日本の法律では警察官はどのような場合に発砲、および、威嚇射撃ができるのでしょうか? 解説していきたいと思います。

 

■どのような場合に発砲できるのか

警察官は拳銃を所持しています。一般人であれば、拳銃を所持するだけで、銃刀法違反で処罰されます。警察官が拳銃を所持して良いのは、それを使う必要があるということです。

どのような場合に使えるのでしょうか。これは、国によって違います。

治安の悪い国だと、被疑者が不審なそぶりをしただけで発砲が許されます。その段階で警察官が発砲しないと警察官の生命が危ういからです。例えば、交通違反をして警察に停められ、運転手が免許証を出そうとして、胸ポケットに手を入れただけで、発砲されてしまうことがあります。

日本では考えられませんが、治安の悪い国だと、胸に手を入れること、すなわち拳銃を取り出すこととみなされているようです。

日本では、警察官職務執行法第7条(武器の使用)が定められています。簡単に言えば、正当防衛や緊急避難の要件がある場合だけ、人に向かって発砲できます。つまり、人の生命、身体を守るためにやむを得ない時にだけ、人に向かって発砲できます。これは、非常に厳しい要件です。

 

■威嚇射撃の場合は?

また、人に向かって発砲するのではなく、空に向かって発砲したり、あるいは、拳銃を構えて威嚇するような場合でも、厳格な要件があります。詳しい内容は、警察官等けん銃使用及び取扱い規範に定められています。

例えば、逮捕しようとしたところ、被疑者が逃亡したような場合は、威嚇射撃が許されますが、被疑者に向かって発砲することは許されません。逃亡する被疑者が第三者や警察官に攻撃したような場合は、上記の正当防衛や緊急避難の要件を満たせば、被疑者に向かって発砲することが許されます。

警察官は、日常業務では、拳銃を腰に装備していますが、すぐに使える状態にはなっていません。それも規則によって定まっているからです。あらかじめけん銃を取り出しておくことができる場合やけん銃を構えることができる場合など細かく上記の規範によって規制されています。

これだけ厳しい要件が求められているのは、日本がそれだけ安全だということです。今後治安が悪くなれば警察官の武器使用の要件も緩くなると思いますが、そうならないでほしいです。

 

*この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。

*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)

【画像】イメージです

*sakpat / PIXTA(ピクスタ)

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星 正秀 ほしまさひで

星法律事務所

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