「パワハラ」という言葉が登場するようになってもうずいぶんと経ちますが、職場での嫌がらせやいじめの被害報告は増え続ける一方のようです。
厚生労働省が今年6月に発表した「平成27年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、2015年に全国の労働局が受け付けた相談件数は8年連続で100万件を超えました。また、労使間のトラブル第1位は、4年連続で「いじめ・嫌がらせ」で、実に過去最高の6万6566件にも及んだということです。
働いていれば、誰しもが被害に遭いかねないパワーハラスメント。上司にパワハラをやめさせるためには一体どうすればよいのでしょうか。今回は、この問題について考えてみたいと思います。
■①社内や社外の相談窓口を利用する
最近は、社内にパワハラ相談窓口が設けられているところも少なくありません。まずは、社内の相談窓口に相談して、パワハラをやめさせるよう働きかけてもらうという手段があります。
しかし、小さい会社だとこのような窓口が設けられていないところもありますし、設置されていてもうまく機能していないことも少なくありません。
このような場合には、各都道府県の労働局に設けられている「総合労働相談コーナー」に相談してみましょう。自身で解決するためのアドバイスをもらえることもありますし、必要な場合には、申請することによって、労働局が間に入って紛争解決の手助けをしてもらうこともできます。
方法としては、労働局長による会社に対する指導や助言がまず挙げられます。指導助言による自主解決を会社ができない場合には、紛争調整委員会があっせんを行い、会社といじめ被害に遭っている社員に対して、あっせん案を示して、解決に導きます。
■②訴訟を起こし、損害賠償請求を行う。
その他、パワハラによって受けた精神的苦痛に対する慰謝料など(心療内科などに通院するような事態になった場合にはその治療費も)を請求するという方法もあります。
しかし、訴訟を起こすには、その上司によってパワハラを受けていたことがわかる証拠を提出する必要があります。パワハラ問題は、なかなか証拠がなく、訴訟にすることが難しい場合もあります。
上司の説教が始まりそうな場合には、即座にスマホなどを使って録音しておく。仮にメールでハラスメント行為があった場合には、そのメールを保存しておくなど、とにかくリアルタイムで「されたこと」を記録として残しておくことが大切です。
個人的には、すぐに訴訟をするよりは、社内の相談窓口や労働局の相談窓口をまず利用してみることをお勧めします。訴訟を起こすのは、やはり証拠が必要という点でハードルが高いといえます。
また、訴訟を起こすと、会社に居づらくなってしまって、事実上、会社を辞めざるを得なくなることもありえます。
ただ、泣き寝入りをする必要は全くありませんし、我慢のしすぎもよくありません。パワハラがあったら深刻な状況になる前に、相談をすることをお勧めします。
*この記事は2015年5月に掲載されたものを再編集しています。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)
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