4歳の子供がいる結婚7年目の専業主婦からの、次のような相談がネットの掲示板で注目されていました。
夫が不倫し、不倫相手が妊娠5ヵ月。この不倫相手の女性も既婚者とのこと。双方の夫婦が4人揃って話し合いましたが、結論が出ません。現在、夫は家を出て行き、離婚を迫っているとのこと。また、夫にはまとまった金銭もないようです。このようなケースでは、相談者である妻はどうしたら良いでしょうか。
■まずは弁護士、もしくは法テラスを通して「生活費」の請求を
まずは、弁護士に相談することです。専業主婦で弁護士に依頼する費用がないなら、法テラスを利用することです。法テラスだと、無料相談をしていますし、お金が無くても弁護士に依頼することができます。
そして、家を出て行ってしまった夫から当面の生活費をもらえるようにすることです。夫婦間の生活費を婚姻費用と言い、妻は夫に対し婚姻費用分担請求ができます。どの程度の額を請求できるかは、算定表によって決まります。例えば、夫の年収が500万円で、14歳以下の子供が一人いる場合、専業主婦の妻は、月額8万円から10万円の婚姻費用を請求できます。算定表はこのリンク先(出典:裁判所ウェブサイト、養育費・婚姻費用算定表)から見られます。
■目先の生活費に惑わされずに将来を見据えて
月々の婚姻費用が決まっても、それだけでは生活費が足りないこともこともあります。その場合には、生活保護の申請をしてください。近くの市区村長役場に相談に行くと良いでしょう。法テラスで頼んだ弁護士に一緒に行ってもらうと話が早いです。
生活が安定したら、今後の夫婦関係をどのようにするのか、じっくり考えていきましょう。ここで大事なのは、生活が安定する前に今後の夫婦関係をどのようにするか決めないことです。生活が不安定だと、目先の慰謝料や財産分与の額が気になり、ある程度のまとまったお金をもらうことが目的になったり、あるいは、母子手当をもらうために離婚を選択してしまいがちです。そのように拙速に夫婦関係を決めてしまうと、後々後悔してしまうケースが多いのです。
■浮気した側からの離婚請求は認めれるまでに7、8年は要する
浮気した夫が離婚請求しても、裁判所は簡単に離婚を認めません。離婚が成立するまでは、上記の婚姻費用をもらえます。妻側が慌てる必要はありません。じっくりとご自身と子供の将来を考えることです。今の裁判実務では、浮気した夫の離婚請求が認められるのは、最短でも7、8年かかります。その間に妻はじっくりと考えることです。頼んだ弁護士とよく相談することです。
浮気した夫が戻ってくる可能性があるのか、子供が大きくなったら再就職するのか、子供と夫との面会交流をどうするのか、をまずは整理しましょう。また、仮に離婚するなら、慰謝料、財産分与、親権、養育費、年金分割はどうするのか、決めるべきことは山ほどあります。じっくり腰を据えて考えることが重要です。
相談者の夫にはまとまったお金が無く、まとまった慰謝料を支払えないということですが、離婚調停で分割払いにすることもできます。そのような事も含め、弁護士とじっくり相談することです。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
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