2歳児の父親が付き合っている女性と一緒になって、2歳児に無理矢理たばこを吸わせ、それをFacebookにアップしたところ、暴力行為等処罰に関する法律違反で父親と女性が逮捕されました。
このニュースを見た時、暴力行為等処罰に関する法律違反で逮捕することが奇異に感じました。というのは、この法律は、暴力団とか非行グループなどの違法な集団犯罪を処罰する法律だからです。順を追って解説します。
●暴行罪や強要罪の可能性はないのか
まず、子供に無理矢理たばこを吸わせる行為は、暴行罪あるいは強要罪となります。子供を脅かして吸わせたような場合は、強要罪ですが、ニュース画面を見る限り、脅かして吸わせたと言うよりも、無理矢理子供の口に持って行って吸わせていますでの、暴行罪になると思います。
暴行罪だと、2年以下の懲役または30万円以下の罰金等になります。
しかし、2人以上の者が共同して暴行する時は、暴力行為等処罰に関する法律違反となり、3年以下の懲役または30万円以下の罰金等になり5割増しの法定刑となります。
詳しい説明は、私が書いた別の原稿(暴行罪や傷害罪とはどう違う? 「暴力行為等処罰に関する法律」とは)に譲りますが、この法律は、暴力団とか非行グループなどの集団犯罪を一般の暴行罪などよりも重く処罰して、集団犯罪を防ごうという趣旨の法律です。
●「暴力行為等処罰関する法律」の適用はおかしい?
本件は、子供を虐待する父親とその父親と付き合ってた女性による犯罪です。なにも、暴力行為等処罰関する法律を持ち出す必要はなかったと思います。
父親が1人で子供にたばこを無理矢理吸わせた場合と、付き合っていた女性と2人で吸わせた場合に、罪の重さに差はないと思います。どちらも悪質な児童虐待です。父親1人であれば、罪が軽くなるとは思えません。
非行少年が1人でリンチする場合と、複数でリンチする場合とを比べれば、後者を重く処罰する必要はあると思いますが、本件とは性質が違うと思います。
とはいえ、警察は2人で虐待したことを1人で虐待したよりも重く処罰すべきと考えたのでしょう。今後の捜査や裁判を注目したいと思います。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)