ある男女が離婚した場合、男性は、離婚したその日にでも他の女性と結婚することができますが、女性については、離婚から半年経過しないと結婚できないことはご存知でしょうか。
民法上、女性については、離婚から6か月間が経過しなければ再婚することができないと定められています(民法733条1項)。
この規定が設けられた理由は、離婚から6か月以内に子が生まれた場合、前の夫の子か後の夫の子か分からないといった事態になることを避けるためです。この規定が設けられたのは、今から100年以上前の明治時代です。
●DNA鑑定がなかったころの法律に意味はあるのか
当時は、DNA鑑定といった科学的な方法がありませんでしたから、女性に一定期間再婚を禁止することによって、父性推定の混乱を避ける必要性があったのだと思います。
しかしながら、現在は、DNA鑑定等の科学的方法によって、容易に子どもの父親が誰なのか確認することができますので、女性に一定期間再婚を禁止するという制限を加えてまで上記規定を維持する必要性はなくなったものと考えます。
そのため、民法733条1項の規定は、合理的理由によらない「性別」による差別であって、憲法14条1項の「法の下の平等」原則に違反して無効であると考えます。
●過去に「合憲」との判決はあるが・・・
この点、民法733条1項の憲法適合性について、最高裁は、平成7年に、当該規定の立法趣旨が父性推定の重複を回避することにある以上、民法733条1項の規定は合理的に根拠に基づく法的取扱いの区別であり、憲法14条1項には違反しないと判断しました。
もっとも、この判例が出たのは、今から18年も前であり、当時と比べて現在はDNA鑑定の精度が格段に向上しているでしょうから、最高裁は今後もこの判断を維持するのかどうかは分かりません。
なお、ネットの記事によると、この問題について、最高裁は早ければ年内にも憲法判断を示す見通しだということですので、最高裁の判断に注目したいと思います。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)