マイナンバーの導入が近づき、様々な話題が世間を賑わせています。
さっそくマイナンバーを悪用した詐欺事件が発生したり、マイナンバーが導入されると副業がバレるのか?という問題が注目されるなど、利便性よりも不安視する声が多い様に感じます。
今回の記事では、マイナンバーが導入される事で便利になると言われる一方、導入されることにより発生しうる法的な問題について検討していきます。
■窃盗や詐欺などの直接的な被害
将来的には、順次、健康保険証としての利用や、年金受給申請、各種の公的扶助手当の申請、税金還付にも利用されることが想定されているようです。
現在は、住民票や戸籍謄本を利用して各種の公的扶助申請をすることが多いですが、マイナンバーにより、将来はマイナンバーだけで各種の申請が可能となる可能性があります。
そうすると、当然、他人の番号を知っていれば、他人に成り済まして、不正受給をするケースが出てくると予想されます。
もっとも、マイナンバーだけで年金などを申請できるようになっても、マイナンバーに加えて暗証番号や生年月日、写真などでの本人確認も当然合わせて行うはずですから、現在の申請方法と比べて、直ちに不正受給が大きく増加するかどうかは、運用次第でしょう。
仮に、不正受給が発覚した場合は、詐欺罪等の犯罪が成立します。
また、刑法上の詐欺とは別に、マイナンバーの不正取得行為自体に、3年以下の懲役または150万円以下の罰金刑も課されます。
ちなみに、マイナンバーカードごと窃取する場合は刑法上の窃盗罪も適用されますが、マイナンバーという番号自体は情報であって有体物ではないので、メモするなど番号情報だけを盗んでも窃盗罪にはなりません。
■個人情報漏えいの被害
マイナンバーには、住所、氏名、生年月日などの情報に加えて、口座情報や受診情報なども記録されるようになる可能性があります。
マイナンバー法には、個人番号を利用する者の不正漏えいに関する罰則もありますが、行政組織としてずさんな管理をしていた場合、国家賠償請求訴訟により、情報漏えいについての慰謝料を請求できるケースもあるでしょう。
■憲法との関係
マイナンバーを付与すること自体は、現在もある年金基礎番号や健康保険証番号、住基コードなどの番号を統一するだけであり、憲法に違反することはありません。
もっとも、公的機関によるマイナンバー取得の目的と無関係・不必要な情報収集・管理は、プライバシー権を侵害する可能性があります。
マイナンバーカードに買い物履歴を記録した人だけに軽減分の消費税を還付するという財務省の提案が一時期話題になりましたが、銀行口座の紐づけも含めて、国家による過剰な情報管理は、行き過ぎると憲法上の問題も孕んでいます。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中 国法務、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件等が専門。)
*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)