先日、某テレビ番組である女性芸人が非常識な店員のエピソードを話していました。
その女性芸人がブランド店で洋服を購入したところ、店員はその芸人が着るとブランドイメージが損なわれると考えたようで、店員から「うちの商品をテレビで着ないでいただいてもよろしいですか?」と言われて腹が立ったとのことでした。
実際に店員からこのようなことを言われた場合に、法律上店員の要求を聞かなければならないのでしょうか。
●店員の要求は無視してよい
結論を言うと、店員の要求を聞く必要はありません。お金を払って購入した以上、購入したものをどう使おうと買った人の自由です。テレビで着ようと法律上は全く問題ありません。もし、女性芸人がテレビで着てブランドイメージが損なわれることを防ぎたいのであれば、店員は女性芸人に洋服を売らなければいいだけの話です。
もしくは、女性芸人が洋服を購入する前に、「購入してもテレビに出演する際には着ないでいただけますか」と言い、芸人がそれを了解した上で、購入したのであれば、店員の言うとおり、テレビ出演時にその洋服を着てはいけないことになります。
要は、女性芸人にテレビで着てほしくないなら売る前に言えよ、そもそも着てほしくないなら売るなよ、ということです。
●購入したものをどう扱っても買主の自由
なお、これは洋服に限った話ではなく、またテレビ出演に限った話でもありません。
どんな品物であっても、また購入後に店員にどのようなことを言われても、一旦購入した以上、購入物をどのように扱うかは買主の自由です。ですので、店員の発言は法律上何の拘束力も生じず、完全に自由に使用して大丈夫です。
どこのブランド店かはわかりませんが、ずいぶん失礼で非常識な対応をする店だなあと思いましたが、ただ、その女性芸人が大人だったのは、失礼な対応を見て言い争うのではなく「私の影響力ってすごいんで」というように、店員の失礼な対応をプラス評価に変えてしまった点です。このような大人の対応は私も見習いたいところです。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)
*画像: fiphoto