最近、インターネット上で「お手伝いと言う名の児童労働」と題された日記が話題となっていました。
内容は「女の子だからと言って有無を言わせずやらされた掃除や洗濯、裁縫などは児童労働と同じだった」というものです。
しかし、子どもが両親の営む家業を手伝うことはよくあることでしょうし、一般の家庭でもしつけの一環として掃除、洗濯、皿洗い、片付け等々のお手伝いをさせることは珍しくないでしょう。
はたして上記のようなお手伝いや家事労働を子どもに行わせることに法的な問題は一切ないのかについて解説したいと思います。
●学業の妨げにならない範囲であればOK
家庭内のお手伝いが数時間にわたることがある場合でも、義務教育の妨げにならない範囲であれば法的に問題はありません。
学校を休ませたり、宿題をやる暇を与えなかったり、十分な睡眠時間を確保させなかったりするような態様でお手伝いをさせる場合でなければ、お手伝いの対価を与えなかったとしても、民法や児童福祉法に反して違法となることはないでしょう。
なお、家庭外における労働については、労働基準法が15歳未満の児童を労働者として使用することを原則として禁止しています。
●子の意思に反して花嫁作業をさせることは虐待にならない?
炊事、洗濯、掃除、裁縫等の花嫁修業をさせることは、基本的には虐待に当たりませんが、子どもの意思を制圧するような度を超えたものは虐待になることもあります。
児童虐待防止法と厚生労働省の基準によれば、虐待には(1)身体的虐待、(2)性的虐待、(3)ネグレクト、(4)心理的虐待の4類型があると定義されます。
たとえば、花嫁修業をしないからといって食事を与えなければ、(1)身体的虐待や(3)ネグレクトに当たるでしょう。また、「こんなこともできないなら嫁にいけないどころか人間として価値がない!」、「できるようになるまでうちの子ではないから口を利くな!」などと繰り返し言うことは、(4)心理的虐待に当たります。
以上のように、子どもにお手伝い等をさせることは原則として違法ではありませんが、どうしても嫌だというものを無理強いするのは教育上の観点からも好ましくないと思います。
お子さんの年齢、性格等に合わせて、将来のためのしつけの一環としてお手伝いをさせるのがよいでしょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)