安倍政権を批判するデモが各地で行われています。なかには安倍首相をヒトラーに見立てたりするデモも行われるなど、過激な活動も多くなってきているようです。
最近ではとあるラーメン屋さんが、注文する前に「安倍クソッタレ!」と大きな声で言うと味玉1つをサービスするということが話題になりました。
一般人に対し、「ヒトラーと同じだ」とか、「クソッタレ」と言えば、明白に名誉毀損罪となり、3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金となるか、あるいは侮辱罪となります。
ところが、安倍首相に対しそのように言っても、警察は事件にしませんし安倍首相の側近が被害届を出すようなこともありません。それはなぜなのでしょうか。
●「表現の自由」と「クソッタレ」
憲法21条は表現の自由を定めています。
表現の自由とは、自分の言いたいことを表現出来る自由です。芸術家が作品を発表したり、小説家が小説を発表したりあるいはマスコミが報道したりする自由です。この自由を行使したことにより、国家権力は表現者を処罰出来ないというのが表現の自由です。
表現の自由の中でも一番大切なものは、権力に対する批判の自由です。
内閣総理大臣は、日本における最高権力者です。それに対する批判の自由は最大限に保証されます。従って、言葉使いが相当過激になっても表現の自由の範囲内と考えられ、処罰されないのです。このような考えは、西欧近代憲法に特有な考えであり、日本国憲法も西欧近代憲法の流れの中にあります。
ところで、隣の韓国では、産経新聞の記者が大統領のプライバシーを侵害したとして、名誉毀損罪に問われ、出国出来ない状態が続いています。仮に、日本で同様な報道をしたとしても、日本国憲法がありますから、名誉毀損罪に問われることはありません。
*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)
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