渋谷区では、今年3月の区議会に、同性同士のカップルに対して結婚に相当する関係を認める証明書を発行するという内容の条例案を提出する動きがあるようです。
また、安倍首相が18日の参議院本会議において、現憲法における結婚の解釈を述べたことでも話題になっています。
現在の日本では、一般的に「結婚」というと男女のカップルが想定されることに異論はないところだと思います。
実際に、今のところ我が国の民法をはじめとする「結婚」に関連する法律は、いずれも婚姻関係にある二人については「男女のカップル」であることを前提としているように読めます。法律に書かれている「父母」や「夫婦」という言葉の意味が本来的に「男女」という意味を持つから必然的にそのように解釈されているのでしょう。
一方で、憲法の結婚に関する定めには「結婚は異性間にのみ成立する」と明確に書かれていないことから、憲法は同性間の結婚を否定していないのではないかとも言われています。
今回は、その詳細について解説していきます。
法律の最高規範である憲法を見てみましょう。結婚については第24条に定めがあります。
その同条第1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と定められています。
また、同条第2項は、「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と定められています。
これらの条文の文言を杓子定規に解釈すれば、「両性」や「夫婦」という言葉があるので、前者は「男女二つの性別」、後者は「夫(男性)と婦(女性)」を意味する以上、憲法上も結婚は男女間においてのみ予定されていると考えることも出来ると思います。
●憲法は同性婚を禁じていない!?
では、憲法は異性同士の結婚しか認めていないのでしょうか。
それは、憲法の文面を単純に解釈するだけではわかりません。憲法において第24条が制定された意義、経緯、制定された時代背景等を無視すべきではないでしょう。
憲法24条が制定された意義は、当時の日本の時代背景としてまだ女性の地位が低く、日本独特の家長制度が存在しており、結婚というもの自体に「家のため」、「親の意向に沿って」という形式が残っていたものを払拭するという点にあったとされています。
そうであるならば、「両性の合意のみ」というところの「両性」には力点は無く、「(親などの)外部の意向に左右されること無く当人同士の意思により結婚は成立するものだ」というところに力点があると考えるべきではないでしょうか。
同様に、「夫婦」という文言も「男女」という意味では無く、「結婚をする二人」という意味だと考えれば、憲法は結婚について必ずしも生物学上の男女に限る趣旨ではないと理解できると思います。
なお、この点については、憲法24条第2項が、「個人の尊厳」に立脚することを明記していることからも、同性愛者個人の尊厳をないがしろにするような結婚制度はむしろ憲法に反するものであるともいえるのではないでしょうか。
●遠くない未来同性婚はあり得るかもしれない
現在我が国において「結婚は生物学上の男女にのみ成立する」という常識があることは否定できませんが、最高規範である憲法は必ずしも同性同士の結婚を否定していないと僕は思います。
渋谷区の条例がきっかけとなり、そう遠くない将来、同性同士の結婚を明確に認めるような法改正があっても不思議ではありません。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)