受験シーズンのピークが過ぎ、受験生はあと少しで苦しい受験勉強から解放されることとなります。
誰もが一度は経験したであろう受験やテストですが、中にはカンニングをしようとしたことがある人もいるかと思います。「カンニング」というとなんとなく軽い気持ちで使われ、行われているようなイメージですが、法的には何かの処罰がありえるのでしょうか?
●カンニングは偽計業務妨害罪?
考えられる犯罪としては、偽計業務妨害罪が挙げられるところです。
偽計業務妨害罪は、偽計を用いて業務を妨害した場合に成立する犯罪です。「偽計」とは、人を欺罔、誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用するなどの違法な手段を用いることです。カンニングは、現実には他人の解答などを見ているにも関わらず、何も見ていないというふうに装うものであり、「偽計」に該当する可能性があります。
次に、問題となるのは、「業務を妨害した」といえるかどうかです。
「業務を妨害した」といえるためには、業務の外形的な混乱・支障が現実に生じることまでは必要とされていないため、抽象的にそのような危険性があれば良いことになります。
カンニングをする行為については、その場で発見した場合には適切な対応が必要となるでしょうし、他の受験生への影響もあわせて考えると、業務の外形的な混乱・支障が生じる危険性があるといえるのではないでしょうか。そのため、カンニングについては、偽計業務妨害罪が成立する余地があるということになります。
●実際に逮捕されたことも
実際にも、カンニングについて偽計業務妨害罪で逮捕された事例があります。
ご存じの方も多いとは思いますが、京都大学の入学試験中に、携帯電話を利用して入学試験問題の解答を見た受験生について、京都府警は偽計業務妨害罪で逮捕しました。
この事件では、逮捕されたのが少年であったため、家裁送致となり、カンニング行為について偽計業務妨害罪が成立するか否か、という点については明らかとはなっていませんが、先に述べたようなことを考えれば、カンニング行為に偽計業務妨害罪が成立する可能性はあると思います。
ただし、これは入学試験などの一定の規模をもって行われたものについてのカンニングであったという特徴を忘れてはなりません。学校の期末試験や中間試験などで同じことが行われたとしても、学校内部の問題であり、偽計業務妨害罪が成立する可能性は低いのではないかと思います。
とはいうものの、罪になろうとそうでなかろうと、カンニングは絶対にやってはいけません。試験には正々堂々と自分の実力で臨むようにしましょう。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)