知らないとヤバイ「連帯保証人」の基本…引き受けるとどうなるの?

「頼む!この通り!一生のお願いや!保証人になってくれ!今を乗り切れば俺の会社は持ち直すんや。お前には絶対に迷惑はかけへん。ここにサインしてくれ……。」

このように10年来の親友に頭を下げられ書類を見ると、「借用書」の文字が。こんな場面に出くわしたことは有りませんか?もしかしたら今後の人生で出くわすかもしれません。

こんな時、あなたならどうしますか?

金銭消費貸借契約(いわゆる「借金」)、アパートなどの賃貸借契約を締結する際に、保証人を求められることがあります。しれっと「保証人」と書きましたが、そういう場合、ほぼ確実に相手から求められているのは単なる「保証人」ではなく、「連帯保証人」です。

この「連帯」という文字が入っているかどうかで、実は法律的にはかなり意味が違ってきます。借金の場合を例に挙げて以下にご説明しましょう。

ぼったくり被害に遭ったら絶対にしてはいけないこと、やるべきこと

借金女性

●保証人と連帯保証人の違い

(1)単なる保証人の場合、債権者(お金を貸した人)が保証人に返済を求めてきたとしても、まずは主債務者(お金を実際に借りた人)に「催促してくれ」と言えます(法律上、「催告の抗弁」といいます)。しかし、連帯保証人の場合、そのように言うことは出来ません。

(2)単なる保証人の場合、債権者が(1)に従ってまずは主債務者に返済を求めてから保証人に返済を求めてきたとしても、保証人の方で主債務者に財産が有り、かつ、その執行が容易であることを証明すれば、債権者はまず主債務者の財産から取り立てなければいけません(法律上、「検索の抗弁」といいます)。しかし、連帯保証人の場合、仮に主債務者に財産があったとしても、返済に応じなければいけません。

(3)仮に保証人が複数いる場合、単なる保証人なら負担すべき債務額は人数に従って割った金額ということになります(法律上、「分別の利益」といいます)。連帯保証人の場合は何人連帯保証人がいても、一人一人が全額を請求されても拒むことは出来ません。

細かい話を言い出せばきりがありませんが、単なる保証人と連帯保証人の大きな違いは以上の通りです。

すでにお気づきかもしれませんが、連帯保証人とは、こと返済義務の重さという意味では、「主債務者と同じ扱いを受ける」ということを意味します。

主債務者と同じ扱いを受けるにもかかわらず、主債務者とは違い、実際にお金は手元に入りません。そういう意味では、主債務者よりも厳しい立場とも言えるかもしれません。

往々にして主債務者はそもそも借金をする人ですから、貸す側も返せなくなった時点でそこまであてにされない場合もあります。ただし、連帯保証人はお金を返すための人ですので、一定の資力を有していることが条件になりますし、貸す側からあてにされやすいともいえます。

 

●連帯保証人になっても良いの?

さて、ここまでご説明したうえで、連帯保証人になるべきか否かという話です。

あくまでも最終的には読者様自身がお決めになられることですが、まず大切なことは以上のような連帯保証人に課せられる法律上の義務を良く理解することです。

裁判になってから「連帯保証人の正しい意味は知らなかった」などと主張しても、およそ裁判官は聞き入れてくれません。連帯保証債務について裁判を起こされた依頼者様や、連帯保証債務が支払えずに破産を余儀なくされた依頼者様の多くは、「絶対迷惑かけないって言われたのに…。」とおっしゃります。

もちろん、これも裁判等では意味のない主張です。連帯保証人とはいえ、お金を払えない場合はもちろん、裁判手続きを経て預貯金や不動産に強制執行される可能性があります。

こういった事情を踏まえると、「最悪の場合、この人にならお金をあげてしまってもいい。」と思えるような場合に限り、連帯保証人を引き受けるべきではないかと、個人的には思っています。

 

*著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)

河野先生
河野 晃 こうのあきら

水田法律事務所

兵庫県姫路市本町68-170大手前第一ビル3階

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