インターネットで買い物をする人も多いと思いますが、現物を実際に見ずに購入することになるのはなかなか怖いという人も多いのではないでしょうか?
そのため、新品であっても購入してみたらイメージと違った……ということは多くあると思います。ましてや中古品では、気付かなかった傷や汚れなど多くの問題があります。
このような場合、法的に何か請求することができるのでしょうか。特に最近ではオークションやフリマアプリなどで、「ノークレーム・ノーリターン」を謳う出品者が多くいますが、このような「ノークレーム・ノーリターン」は果たして効力があるのか考えてみたいと思います。
●「ノークレーム・ノーリターン」と書かれていなかった場合は返品可能
中古品の売買は、はじめから何らかの不具合があることを想定してなされるものです。
それでは、どのような不具合であっても返品等ができないかというと実はそうではなく、よく観察してみてもすぐには発見できないような不具合の場合には、中古品であっても、契約の解除もしくは損害賠償請求をすることができるため、返品することも可能です。
ただし、当事者があらかじめ責任を負わないことを約束(免責特約)することもでき、この免責特約がある場合には何らの請求もできないことになってしまいます。
●「ノークレーム・ノーリターン」と書かれていた場合は?
今回の問題である「ノークレーム・ノーリターン」は、売り主側が何ら責任を負わないことの約束であり、まさしく免責特約を付していることになります。
そのため、原則として解約返品や損害賠償請求はできないことになります。
もっとも、売り主側で、ある不具合の事実について、「知っていたのにあえて告げなかった」ときには、免責特約があっても解約返品ができます。
どのような場合に、「知っていた」といえるのかは難しい問題がありますが、極端な話でいえば、本来動くはず商品が動かないとか、見るからにあきらかに不具合があるなどの場合は、知っていて当然であると考えることができると思います。
そのような事実を隠している場合には、「知っていてあえて告げない」といえます。知っていたのにあえて告げなかったかどうかは明確な基準があるわけではなく、ケースバイケースとしか言えませんが、常識的に考えてどうであったか、が重要な要素であることは間違いありません。
これまでは相手が個人であることを念頭に話を進めてきましたが、相手が事業者である場合には、消費者契約法の適用を受けることになります。そのため、仮に「ノークレーム・ノーリターン」の約束をしていたとしても、売る側が事業者であるならば、その約束は効力を生じないことになります。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)