年末も近づいてきましたが、師走の名のとおり、皆様お忙しくされているでしょうか。
中国では、旧暦の正月を祝うので、上海の街にはそれほど変わった様子はありません。しかし日本人駐在員同士では忘年会シーズン真っ盛りで、今年の中国のニュースを酒の肴にあれでもないこれでもないと議論しています。
ある日系企業の忘年会の様子を覗いて、2014年の中国関連ニュースをおさらいしてみましょう――。
大手商社の日本人駐在員の平さんと長部部長が、顧問弁護士の王先生とささやかな忘年会をしています。
平さん「いやー、ここのモツ鍋は美味しいですねえ、王弁護士」
王弁護士「平さん、違うよ。ここは在日韓国人の韓国料理屋だから、この鍋は、ちりとり鍋!鍋の形が四角いちりとりに似てるでしょ?大阪に住む韓国の人たちが始めた料理みたいよ。モツだけでなくカルビも入ってるでしょ?」
長部部長「流石、王先生、良くご存じで。中国で日本人と中国人が韓国料理を食べる。東アジアの縮図と言ったところですね。ところで今年も終わりですが、日系企業に影響の大きかった中国10大ニュースとしてはどんなものが挙げられますかね?」
●その1…首脳会談
「10個は多すぎるよ、よくばりね部長」と笑いながら、王弁護士が箸を置く。
王「そうね、なんといっても11月のAPECのときの習近平国家主席と安部首相の首脳会談ね。ビジネスにもそのうち影響はあると思うよ」
平「全く笑わない習近平の態度が大人げないと思いましたけど」
王「面子の問題ね。中国では意味なく笑う方が大人げないとされるよ。笑顔がなくても国家主席が日本と会ったというのは大きいよ。中国の地方政府は、日本企業や政府とどの程度交流を再開していいか中央政府の考えが分からず困っていたので、歴史問題は忘れないが互恵関係を深めるというメッセージが明確になったのは、中日双方に良い指針ね。」
●その2…大気汚染問題
平「APECといえば、APECブルーはすごかったですね。」
王「APECの期間は工場や車の排ガス規制をしたから、PM2.5の数値は日本よりも良かったね。でもその間操業停止をした工場などの吹き飛んだ利益は、何十億円ではきかないでしょう」
部長「大気汚染の問題は昨年から大きな問題になり出したけど、北京マラソンやAPECなど、世界的イベントのせいで特に注目されましたね。日系企業にとっても駐在員の健康安全管理義務としてどこまで気を使えば難しいところでしょう」
●その3…訪日中国人観光客200万人突破か
王「後は、中国からの日本の観光客が200万人を超えるみたいね」
部長「日本政府観光局の予測ではそうみたいですね。」
平「東京に帰っても、中国語がよく聞こえてきて振り返ってしまいますよ」
王「中国の多くの人は、生活の中で日本人に触れる機会は少ないからね。良いサービスや出会いをすれば、日本に対する偏見などは無くなっていくでしょ。」
●その4…iPhone 6騒動
王「同時に、日本での行動が中国人全体の評判を下げることがあることも、中国の旅行客には分かってほしいね。丁度iPhone 6が販売された9月に日本に行ったけど、友達からiPhone 6を買ってきてというメッセージが沢山入ったね。」
平「銀座に転売目的の中国人が並んで問題視されていましたね。結局、値崩れして大した利ザヤは稼げなかったみたいですけど。」
●その5…香港自由選挙運動の中環占拠
平「香港の民主化運動もありましたが、余りビジネス的には影響はありませんでしたね」
部長「香港は一国二制度への信頼もあったから、金融センターとして機能していたし、国際仲裁なども多く行われてきた側面があるからね、今回の事は一国二制度を何処まで信用できるかの試金石になったんじゃないのかな」
王弁護士は、「そうね」といって苦笑いをして発言を控えている。独立性の高い日本の弁護士と異なり中国の弁護士は政府部門の許可を受ける必要があるので、少しでもリスクのある発言はしたくないのだろう。
平「王先生、どうしたんですかー。上海だとデモは違法なんですかー。習の悪口いうと捕まっちゃうんですかね。あ、飲んでくださいよー。あと事件、5つ挙げてくださいよー」
長部部長は、マッコリですっかり出来上がった平に対して深いため息をついた。
長部部長「とりあえず話の続きは、場所を変えてにしましょうか」
平「いいですね!良い子がいるお店を知ってるんですよ!」
王弁護士「平さん、元気ねー。」
お次はKTV(中国版キャバクラ)に場所を移して話が続くようです。
(続く)