みなさんは「乞食」という言葉をご存じでしょうか。
乞食とは、いわゆる「物乞い」のことです。元々は仏教用語ですが、一定以上の年齢の人は、路上で食料や小銭などを通行人に求める人や行為をイメージする人も多いのではないでしょうか。
差別用語にあたるとされて使われなくなってきましたが、最近では、「ネット乞食」というインターネットを利用した新手の物乞い(詐欺まがいのものも含む)が登場し、乞食行為は新たな展開を見せ始めています。
寒い季節になり、貧困層にとっては、より厳しい季節となってきました。そこで、今回はこの「乞食」というものについて考えていきたいと思います。
■乞食は禁止されている
乞食行為は、軽犯罪法や多くの自治体の条例によって禁止されています。
また、児童福祉法は、児童に乞食行為をさせることを禁止しています。乞食行為は、日本の高度経済成長の1つの象徴であった大阪の世界万博に合わせて禁止されるようになったと、一説ではいわれているようです。法律的には、憲法上の国民の勤労義務を根拠として、労働もせずに安易に他者から金品を得て生活することを防ぐ趣旨で禁止されている、と考えられているようです。
■乞食とホームレスはイコールではない
乞食とは「ホームレス」を指すと考える人も多いようですが、両者はイコールではありません。
乞食行為を行う人は、必ずしも住所不定ではありませんし、ホームレスが日常的に物乞いをして生計を立てているわけでもありません。筆者の経験からすると、むしろ、ホームレスが物乞いをすることは、ほとんどないように思えます。空き缶や屑鉄拾いなどで日銭を稼いだり、ボランティア団体の炊き出しなどを利用して生活していることが多いのではないでしょうか。
■自活できないと判断した場合には。
安易に路上で乞食行為をしてしまうと、逮捕され、軽いとはいえ処罰されてしまう恐れもあります。しかし、働きたくても仕事がない、どんどん貧困に陥って、もはや手元にお金も食べ物も全くない、そのような事態に陥ってしまうことは、近年の日本社会であれば、容易に起こりうることのように考えられます。
ですから、貧困で困っている方(ホームレスの方も含めて)は、このような状況になる前に、市町村役場や区役所に生活保護の申請を行ってください。
生活保護は、その地に住民票がなくても「そこにいる」という事実だけで申請することができます。申請が通るまでに2週間ほどかかりますが、その人が置かれている貧困の状況によっては、一定程度の仮給付を受けることも可能です。
住まいがない場合には、住まいが得られるよう援助を受けることもできます。
「水際作戦」といって、役所側が、色々と理由を並べて生活保護の申請を阻止しようとするケースも少なくありません。が、弁護士が助力することができます。このような目に遭った場合には、「法テラス」などに連絡をして、弁護士の相談を受けてほしいと考えます。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)