本格的な忘年会シーズン、連日のお酒の席で疲れている方もいるかもしれませんが、更に幹事を任されるとなると、お店選びから手配、お金のやりくりなどなかなかの重荷となりますよね。
最近はそんな幹事の重労働を敬う忘年会プランを打ち出す居酒屋も多く、具体的には「幹事様は料金ゼロ!」「幹事様には一品追加!」の様なものがあります。
大手チェーンでも「幹事は無料」のプランを打ち出している居酒屋が多いため、利用する人も多いかもしれません。しかし、このようなプランを利用した際、幹事が軽い気持ちで「自分が得する行為」を行うと罪に問われるかもしれません。
例えば、幹事は無料ということを黙って、他の参加者からは通常料金を徴収した場合や、幹事がこっそりと、自分の料金をゼロにするために参加者から数百円多く徴収していた場合などです。
これらの行為が法的にどう扱われるのか解説していきます。
■忘年会の幹事が、みんなから少しずつ多めに代金を貰い、自分の代金をゼロにした場合
幹事が自分の代金をゼロにするためにみんなから少しずつ多めに代金を貰ったということであれば、みんなを騙してお金を多めに取ったわけですから詐欺罪が成立します。
そうではなくて、幹事がこの金額がかかると思ってみんなから代金を貰っていたところ、一人分ほど代金が安くなっていて、その分をみんなに返さず自分の分としてお店に支払った場合、みんなに返すべきお金を自分ために使い込んだわけですから横領罪が成立します。
詐欺については「10年以下の懲役」、横領については「5年以下の懲役」という罰則があります。
■「幹事はタダ」ということをだまって、自分は無料に、他の人からは通常料金を徴収した場合
この場合も幹事には詐欺罪が成立する可能性があります。
他の人からすれば「幹事はタダ」と知っていれば通常料金の徴収に応じず、その分安くして欲しいと思うのが普通だし、お店の方も「幹事はタダ」にする代わりにその分の通常料金を上げていると考えられるので結局他の人が損をすることになるからです。
幹事としても、「幹事はタダ」ということを黙って他の人から通常料金を徴収するわけですから、後ろめたい気持ちがあるでしょう。
幹事は、「幹事はタダ」ということを他の人に黙っていることによって、他の人に幹事を含めみんな通常料金を支払うものと誤信させ、みんなから通常料金を騙し取ったことになります。
幹事としては、「幹事はタダ」の特権を得たいのであれば、「幹事はタダ」のお店にすることについて堂々と他の人の同意を得ることです。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)