少し前に「終活」という言葉が話題になったのをご存知でしょうか。
「人生の終わりのための活動」のことですが、実際に自分の死期が近くなってきた際、どのような活動すれば良いのか知っている方は少ないかもしれません。
自分が死んだ後、残された人たち、特に相続人がもめないために、生前にしておくべきことがあります。
本日は、主に法律的な観点から、死後、残された人たちがもめないために、自分が死ぬ前にしておくべきことを4つご紹介します。
●遺産の分配方法を決めておく
自分には全く財産がないという人は特に決めておく必要はないかと思いますが、多少なりとも財産を持っているのであれば、遺言を書いて、死後、自分の財産を配偶者や子どもたちにどのように分配するかを決めておくべきです。
なお、生前、自分の面倒を全くみなかった子どもに対しては、財産を一切あげたくない等特定の相続人だけに財産を相続させない、といったケースもあるでしょう。
しかしながら、相続人には、「遺留分」といって、遺言によって遺産を相続できない場合であっても、最低限遺産を確保することができる権利がありますので(配偶者は法定相続分の2分の1、子は4分の1)、死後、遺産をもらえなかった相続人が、他の相続人に対して遺留分の権利を行使することにより、相続人間で争いが起こる可能性があります。
そのため、もし、自分の相続人の中に財産を相続させたくない人がいる場合であっても、相続人の間に発生する将来の火種をなくすためには、最低限、相続させたくないと思っている人に対しても、遺言によって、その人の遺留分以上の財産を相続させるようにしておくべきでしょう。
●財産の所在を明らかにしておく
被相続人の死後、いざ財産を分けようにも、財産がどこにどのくらいあるのかが分からず、相続人による遺産の調査に手間や費用がかかるというケースが良くあります。
そのため、自分の死後、遺産が速やかに分配されるよう、生前に、自分の財産の所在(不動産であれば登記簿謄本や権利証、預貯金であれば通帳や銀行届出印、保険であれば保険証券等)について記したメモを残しておくべきでしょう。
●債務をなくしておく
被相続人が死亡した場合、プラスの遺産(財産)だけではなく、マイナスの遺産(債務)についても、相続人に相続されます。
そのため、死後、相続人間で債務の支払いについてもめないために、できれば、自分の財産を一部換価してでも、生前に自分の債務はなくしておくべきでしょう。
●喪主や葬儀費用の支払いについて決めておく
死後、誰が葬儀を主宰するのか、その費用は誰が負担するのかでもめるケースがかなりあります。
この点、葬儀費用については実際に葬儀を主宰した者(喪主)が負担すべきであり、相続財産から支出することは許されないとする裁判例もあります。
そのため、自分の死後、相続人間で喪主や葬儀費用の負担についてもめないために、生前、遺言によって、喪主や葬儀費用の支払方法について決めておくべきでしょう。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)