バイト先に掲載されていたという張り紙の内容がTwitterで話題になっていました。
ざっくり要約すると、「面接時に年末年始休まないことを確認しているので、家族や友達と過ごすなどの理由では休みを許可しません。」ということになります。
ネット上では「ブラックすぎる」「だったら時給上げろ!」などのように非難の嵐となっていますが、労働基準法と照らし合わせてみると意外にも問題ない内容となっていました。
この、一件ブラックに見える張り紙の内容でなぜ法律上は問題がないのかを解説していきます。
■労働基準法で「休日」は週に1日で良い
労働基準法は、労働者に対し、少なくとも1週間に1日、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えないといけませんよ、と使用者に義務付けています。
これを週休制の原則といい、労働者が人間らしい生活を営むための最低条件の一つです。
最近、「週休二日」がほとんどだと思いますが、労働基準法上は、週1日休日を与えれば、法律に違反していないことになります。
■実は年末年始の休みは義務づけられていない
多くの企業では、年末年始を休日としています。うち1月1日の元日は年のはじめを祝う国民の祝日です。
国民の祝日については、国民の祝日に関する法律というのがあり、「国民の祝日」は、「休日とする」と規定しています。
国民の祝日に関する法律は、自由と平和を求めてやまない日本国民の美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるための法律です。
多くの企業では、こうした国民の祝日の目的や世間の動向を踏まえて、元日を含む年末年始を休日にしています。
しかし、年末年始に労働者を休ませることが法的に義務付けられているわけではありません。
国民の祝日に関する法律も、「国民の祝日」(元日を含む。)は「休日とする」と規定しているわけですが、労働者を休ませることを法的に義務付けているわけではありません。
したがって、年末年始を休日としていない場合、労働者には年末年始期間中も労働義務がありますので、許可がないのに休めば、その分の給料が出ないのはもちろん、勤務状況不良、職場規律違反、業務命令違反ということで懲戒処分を受ける可能性があります。
■もちろん有給休暇の取得は可能
それでは年末年始に年次有給休暇(年休)を取得することができないでしょうか。
年次有給休暇の取得とは、労働者に有給で与えられている休暇のことですが、雇い入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に与えられる権利です。
年次有給休暇について、使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければいけません(同条5項本文)。これを時季指定権といいます。
ただし、使用者は、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に変更できることになっています(同項但し書き)。これを時季変更権といいます。
したがって、年末年始に有給休暇を取得しても事業の正常な運営の妨げにならないようであれば、時季変更権の濫用と言えますので、年次有給休暇の時季指定権を行使して休みをとることもできるのではと考えます。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)
*画像はTwitter:@GreeDooooon_lol より