映画館に行くと、本編の上映前に「NO MORE 映画泥棒」が登場し録音や撮影の禁止を啓蒙するのはおなじみの光景ですよね。
しかし、そんな中でも、上映中の映画を盗撮して販売したり、動画共有サイトにアップロードするなどする人達もいます。また、最近では、悪気無く映画をスマホで撮影してTwitterで公開し、炎上したなんてこともありました。
悪気無くスマホで撮影しても、個人的に見直すだけだから良いと思っている人も多いかもしれませんが、映画に関しては一般的に知られる著作権法とこと異なる「映画の盗撮の防止に関する法律」という法律があり、厳しく罰せられます。
また、その他にも映画館でやってしまうと罪に問われる可能性のある行為がいくつかあるので紹介します。
■映画の盗撮行為
有料上映中の映画や無料試写会で上映中の映画について、著作権者の許諾を得ずにその映画の影像の録画又は音声の録音をすることは、映画の盗撮の防止に関する法律、著作権法に違反します。
著作権法では、私的使用目的について例外的に著作者の許可なく複製ができるとされていますが、映画盗撮防止法により、無断で映画を盗撮する行為は、たとえ私的利用目的であっても、著作権侵害として禁止されます(ただし、日本国内における最初の有料上映後8月を経過した映画については,適用されません。)。
法定刑は、著作権法の規定が適用され、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はこれらの併科とされています。
映画盗撮防止法は、技術の進歩によって高性能化したカメラを使用し作成された海賊版がインターネット上で流通したり、露天販売されたりすることによる被害を防ぐ目的で平成19年に制定された法律です。
■大声で騒ぎ、観覧を妨害する行為
映画館に対する業務妨害罪となる他、他の観客に対する民事上の不法行為となる可能性があります。
■チケットを買わずに不正に入場する行為
刑法上、建造物侵入罪が成立します。
この他、状況によっては利得詐欺罪が成立することがあります。
例えば、裏口からこっそり侵入したような場合には、欺罔行為がないので、利得詐欺罪は成立しませんが、偽造チケットで入場したり、「再入場で席にチケットがある」などと係り員に偽って入場した場合は利得詐欺罪が成立します。
裏口からこっそり侵入した場合に詐欺罪とならないのは、詐欺罪成立に必要な欺罔行為(処分行為)がなく、不可罰とされている「利益窃盗」と評価されるためです。
この辺は、法学部の試験や司法試験でもよく出題される難しい話です。
「食い逃げしても犯罪にならない?その意外な理由とは」の記事でも同じ論点が触れられていますので、ご参照ください。
■飲食により、シートを汚す行為
飲食自体が認められていても、故意にシートを飲食で汚すと、器物損壊となります。
間違って飲み物をこぼしたなど、過失の場合は器物損壊にはなりませんが、民事上の損害賠償の対象となります。
■痴漢行為
過去には、映画館で痴漢をして迷惑防止条例違反で逮捕された人もいます。
映画館も都道府県の迷惑防止条例の適用がありうることに注意しましょう。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)