弁護士による過払金の着服が横行か 弁護士は罪に問われる?

先日、貸金業者に対して払いすぎた利息を取り戻す「過払金返還請求」を受任した弁護士・司法書士が、取り戻した過払金を依頼者に返還していないと疑われるケースが、2012年以降、全国で少なくとも45件あるというニュースが報じられました。

「過払い金の仕組みを利用した悪質な行為」と調査を担当した会社が言うように、いくら戻ってきたのか、戻ってこなかったなどの情報は弁護士・司法書士の言う事を依頼者は信じるしかありません。

今回は、このようなケースの違法性や、どのような犯罪が成立するのかについてお話しします。

 弁護士

■意図的に返還していなかったケースについて

受任弁護士や司法書士が過払い金を意図的に返還していなかったケースでは、業務上横領罪(刑法253条)、詐欺罪(246条)が成立する可能性があります。

弁護士職務基本規程や司法書士倫理では、受任事件について相手方や他の利害関係者から預かった金員は、自己の金員と区別し、預り金であることを明確にして保管しなければならないと定められています。

具体的には、過払金は、報酬口座などとは別の「預り金口座」にいったん保管しなければならず、そこから、報酬や実費などを差し引いて、依頼者に返還するのがルールです。

いったん預り金口座に入金された過払金について、上記のような処理を行わずに自己の口座に弁護士や司法書士が入れてしまった場合や、自己のために費消してしまった場合、業務上横領罪となり10年以下の懲役に処される可能性があります。

預り金口座に入金された過払金について、依頼者が返還を求めたにもかかわらず「過払金はなかった」「業者の経営状態が悪く取り戻せなかった」などと嘘をついて支払いを免れた場合には、業務上横領罪に加えて、詐欺罪も成立するでしょう。

また、最初から、過払金を取り戻しても依頼者に返還する意思がなかったにもかかわらず、あたかも返還するように騙して受任契約を結んで過払金の請求を行い、得た過払金を自己の口座に入れたり費消した場合にも詐欺罪が成立します。

 

■過払金を返還するのを忘れていた場合

業務上横領罪や詐欺罪は、故意に返還しなかった場合にだけ成立します。返還を忘れていたケースでは、犯罪は成立しません

ただ、弁護士職務基本規程あるいは司法書士倫理によって、弁護士にも司法書士にも、信義誠実義務、依頼者の利益を実現する義務の他、依頼者に対する事件経過等の報告義務、預り金の返還義務等が課されています。

単に返還を忘れていたケースでも、このような義務を怠っていることは明らかですので、弁護士も司法書士も、懲戒の対象となる可能性があります。

懲戒の種類には、戒告という「注意」程度で済む軽いものから、一定期間の業務停止処分、退会命令や除名(弁護士の場合)、業務禁止(司法書士)という重い処分があります。単に返還を忘れていたケースでも、返還しなかった期間やその金額、依頼者に生じた不利益の程度など事情次第で、業務停止などの重い処分が科される可能性があります。

さらに、依頼者は、弁護士や司法書士に対して、当然、取り戻した過払金を自分に返還するよう請求することができます。

なお、先に述べた故意に過払い金を返還しなかったケースでも、当然弁護士や司法書士は懲戒の対象となる可能性があり、また、依頼者は過払い金を返還するよう請求することができます。業務上横領罪や詐欺罪に問われて有罪が確定した場合には、除名や業務禁止など、最も重い処分が下されることとなるでしょう。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)

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寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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