GoogleがGmailで送信されたメールに、児童ポルノ画像が添付されていると判断し当局にそれを通報し、送信者が逮捕されるという事態がアメリカで起こりました。
メールの中身を見られるという状況について、プライバシー侵害であると反発もあるようですが、みなさんはどのように感じるでしょうか。
日本では同じようなことが起こった場合、どのようなことが問題になるかを検討してみようと思います。
■検閲になる?
このような内容の審査がされているということだと、検閲に当たるのではないかと思えます。
検閲は、憲法21条2項前段で定められており、また、Googleのような電気通信事業者に適用がある電気通信事業法3条にも検閲の禁止が定められています。
検閲とは、行政権が主体となって思想内容などの表現物を対象とし、その全部または一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的・一般的に発表前にその内容を審査し、不適当と認められるものの発表を禁止することとされています。
Googleは一企業に過ぎないため、行政権とはいえません。そのため、検閲の定義からは外れることになります。
したがって、検閲であるとはいえないことになります。
■通信の秘密の侵害では?
しかし、通信の秘密(憲法21条2項後段)は、通信の秘密を侵すことはできないとされており、この趣旨を踏まえ、電気通信事業法第4条は、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。」としています。
通信の秘密の侵害の態様としては、以下の3つの類型があるとされています。
知得:積極的に通信の秘密を知る行為
窃用:通信当事者の意思に反して利用する行為
漏洩:通信の秘密を他人が知り得る状態に置く行為
今回、Gmailのシステム上で実装されているポルノ検知の仕組みが機能したということのようですが、通信内容を知ろうとしているので、少なくとも「知得」にあたり、当局に報告している点では「漏洩」に当り得ます。
したがって、Googleが同じことを日本で行った場合、電気通信事業法に反することになりそうです。
これに反すると、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金とされています(同法179条)。
■プライバシー侵害にも
Googleが網羅的にメールを監視(モニタリング)しているということになれば、その対応自体が通信当事者のプライバシーを侵害するという話になってきます。実際にアメリカではモニタリングがプライバシー侵害であるという訴訟にもなっているようです。
犯罪の抑止という点から歓迎するという考え方と、常日頃監視されることの気持ち悪さの調整の問題で、どちらも理解できます。今後どのようになっていくのか、気になるところです。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*画像: l i g h t p o e t