弁護士が語るカジノ合法化 莫大な経済効果の裏にあるデメリットとは

現在の日本では、カジノは刑法上の賭博罪に該当するため、カジノを開催することはできません。

繁華街などにはカジノ店とも呼べるパチンコ屋があることはありますが、これらの店は「建前上は」勝ったとしても換金できないことになっています。

ところが最近になって、カジノ合法化の機運が高まり、先の国会ではカジノ法案が提出されたそうです。ここにきて一気にカジノ合法化の動きが強くなってきましたが、今回はカジノ合法化のメリットとデメリットを説明したいと思います。

カジノ

■最大のメリット

カジノ合法化の最大のメリットは、皆さんもお分かりだと思いますが、経済効果です。

言い換えれば、「経済効果」がカジノを正当化する最大の理由と言っても過言ではないでしょう。もちろんカジノ店の収益による税収増は見込めますが、それだけでなくインフラ整備や雇用の増加、海外からの観光客の誘致などの効果が期待できます。

カジノに関連する企業の株価の上昇も見込めます。一説によるとカジノ導入による経済効果は7兆円にも上るという試算もあるぐらいです。

また、あえてカジノを合法化することによって国や自治体が管理し、暴力団などの非合法組織が介入することを防ぐという副次的な効果もあります。

このように、カジノ合法化はかなりのメリットがあることは事実です。

 

■日本に変化が?デメリットも…

しかしながら、カジノはあくまでも「賭け事」であることを忘れてはなりません。これがカジノの最大のデメリットです。

すなわち、賭けごとである以上、勝って儲ける人がいる反面、負けて損する人もいます。カジノの収益の大半は、この負けた人の賭金から出ていることになりますので、負けた人の数が多ければ多いほど、負けの金額が多ければ多いほど、カジノの収益が上がり、税収が増えるという関係にあるのです。

自分の小遣いの範囲の負けであれば大きな問題はないのですが、自分の範囲を超えた額を賭けて負けてしまうと、多重債務やギャンブル依存症に陥る可能性が非常に高くなります。窃盗や強盗、横領等の犯罪に手を染めてしまう可能性もあります。

かつて、大手製紙業者の会長がバカラ賭博で会社に2億円以上の損害を与えて特別背任罪で逮捕、有罪となった事件はあまりにも有名です。

ですので、1回の来場で使用できる金額に上限を設けたり、1か月に来場できる回数を制限したりするなどの歯止めが必要になるでしょう。また、ギャンブル依存症や多重債務対策もしっかりと整備しておかなければなりません。

ほかにも、海外ではカジノに負けた腹いせに銃を乱射するという事件も起きているようです。日本では一般人は銃を所持していないので、銃の乱射事件が起きる可能性は低いのでしょうが、それでも何らかの暴力行為が発生することは十分に考えられます。トラブルが発生しないような警備体制も必須でしょう。

以上のように、カジノはうまく使えば非常に大きな経済的メリットを生み出しますが、一方で、一歩間違えれば一般市民の生活をぶち壊しかねない大きなデメリットもはらんでおり、諸刃の剣であります。

多重債務問題を長年扱ってきた私としては、経済成長を優先するあまり、カジノの負の部分に目を向けないで拙速にカジノ法案が成立することのないよう祈るばかりです。

 

*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)

山口 政貴 やまぐちのりたか

神楽坂中央法律事務所

東京都新宿区津久戸町4-1 ASKビル2-B号室

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