存在は知っているけど内容は意外と知られていない「漁業権」。潮干狩りを楽しんでいたら実は違法だった…なんてこともあり得ます。
レジャーシーズンを楽しむ為に知っておきたい漁業権の基礎知識についておさらいしてみたいと思います。
■漁業権とは?
漁業法を根拠として、都道府県知事(一部は農林水産大臣)の許可を受けて設定される「一定の水面において、特定の漁業を一定の期間、排他的に営む権利」です。
漁業権はさらに共同漁業権(あわび、さざえ、うに漁業等)、定置漁業権(定置網業)、区画漁業権(養殖業)に分けられ、若干内容が異なります。
■どんなことが禁止されているのか?
漁業権の規制内容は、魚介類の水類や漁法によって細かく分かれていますが、一般の釣り人に一番関係するのは共同漁業権と呼ばれるものです。
これは、漁業権が設定されている沿岸域において、あわび・さざえ等の貝類、わかめ・こんぶ等の海藻類、いせえびやたこ等の定着性の魚貝類の採取等を漁業権者(地元漁協)の排他的権利とするもので、漁業権者の同意なく採取等をすると、漁業権侵害罪として罰金刑に処せられます。
漁業権は、海の秩序と漁業を生業とする人の生活を保護するためのものですので、基本的には自分で食べるつもりでも、漁業権侵害となります。
ちなみに、漁業権は、日本の海岸線に沿った沿岸域の岸から数キロの場所のほとんどに設定されています。
■釣り
では、普通に釣りを楽しむことも漁業権侵害になるでしょうか?
共同漁業権は、うにやあわびなど地先水面の定着性魚貝藻類を保護していますが、レジャー目的で手釣りや竿づりによる「魚釣り」をする行為は、「遊漁」として原則として適法です。
ただし、例えば、船を走行させながら釣りを行うトローリング(ひき縄釣り)や引っかけ針を釣り竿に付けて魚貝藻類を引っかける漁法は、遊漁であっても違法です(漁業権がなければできません。)。
また、魚を突いて採取する「やす」は、発射装置がなければ使用してもよい都道府県が多いですが、もり(水中銃)は、遊漁であっても禁止されます。
なお、遊漁として可能な漁法であっても、共同漁業権の対象となる「いせえび」や「うに」など、魚以外のものを採ると漁業権侵害となります。
■潮干狩り
潮干狩りの目的であるあさりも、あわび、さざえ、いわがき、いせえび、うに、なまこ、こんぶ、わかめ等と同じく共同漁業権の保護対象です。
したがって、漁協が有料で解放している潮干狩り会場以外で、無断で潮干狩りをすると、やはり漁業権侵害となります。
海自体は公共のものであり、「自分で家で食べる分しか採らなければ適法」という感覚を持っている方は多いと思います。
たしかに漁業権は、海自体の独占的使用権を漁業権者に与えているわけではなく、漁業をする権利を保護しているだけですが、広い海にあることがなんとなく違法性を感じさせない原因だと思います。
しかし、毎年のように、海でうにやあわび、さざえを自分で食べるために採取して逮捕されるというニュースも聞きます。
本格的なレジャーシーズンを前に、海でのルールを再確認して家族ともども楽しい思い出にしましょう。
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*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)