昨年10月、京都地方裁判所において、「在日特権を許さない市民の会」(以下、「在特会」といいます)が京都朝鮮学園前で行った一連の示威活動について損害賠償と示威活動禁止を命じるる判決が出されました。
在特会は控訴しておりましたが、その控訴審判決が、今月8日に大阪高裁で下されます。
今回は、この事件を題材として、示威活動が認められる根拠、違法となるケースはどのようなものかについて考えていきたいと思います。
■示威活動の法的な位置づけについて
示威活動とは、多数の者が意思・要求を通すために威力を示す行動などと定義されています。いわゆる「デモ行進」は、示威活動とほぼ同義と考えられます。
このような活動を市民が行うことは、表見の自由(憲法第21条)によって保障されております。
■示威活動が違法になるケース
しかし、表現の自由も、憲法上の他の人権と同様、全くの無制約ではなく、他の人権との関係や公共の利益との関係で制約を受けます。つまり、示威活動も、このような制約を受け、制約を超えた行き過ぎた活動に該当する場合には、違法性が生じることとなります。
なお、本来、憲法上の人権は公権力に対するものと位置づけられていますが、一般市民の間でも、人権保障の趣旨は妥当します。そのため、ある団体の示威活動が他者の人権や利益を不当に侵害する場合には、違法と評価されることとなります。
また、在留外国人に対しても、法人に対しても、原則として、憲法上の人権は、保障されるとされています。
今回のケースも、憲法上の人権の衝突の問題として考えるべきこととなります。
■在特会の事件で問題となった点について
在特会のケースでは、一審の京都地方裁判所は、学校の門の前で多数の者が拡声器を用いたり大声で怒声を上げたり、時には街宣車を投入するなどして、示威活動を行い、その際、同校の児童の保護者が密入国者であることや同校が北朝鮮のスパイを養成していること等を不特定多数の人に聞こえるように摘示したなどと認定しました。
そして、これらの行為が、業務妨害、名誉棄損、人種差別等に該当すると判断しました。
なお、業務妨害とは、学校側が、児童生徒や保護者が在特会の示威活動に恐怖心を覚えたため授業を中断したり、通常の授業ができずに課外授業に振り替えたことなど、学校の教育活動が妨害されたことを指しています。つまり、一審判決は、在特会の示威活動は教育を受ける自由や教育権(憲法26条等)を不当に制約する行為と考えたということが可能です(明文では記載されていません)。
また、人種による差別も憲法で禁止されていますし(憲法14条)、名誉も明文では定められていませんが憲法13条で保障されると考えられるでしょう。
すなわち、一審判決では、在特会の一連の示威活動が、他者の人権を不当に侵害するケースに当たり違法であると判断されたこととなります。
今月8日に下される控訴審判決では、一審判決と同様に、在特会の一連の示威活動が京都朝鮮高級学校に保障される人権を不当に侵害したという判断がなされるのか、それとも、そのような問題はなく、一連の示威活動が表現の自由に基づく正当な活動であったと判断されるのか注目されます。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)
*画像: J. Henning Buchholz