冷凍食品への農薬混入事件で逮捕された容疑者は会社といくつかの労働トラブルを抱えていたことが報じられています。
TBSによる工場関係者への取材によると、容疑者が「トイレ休憩にいったきり帰ってこな」かったり、休憩時間以外に担当外の製造ラインへ出入りして商品を食べるなどしていたりしていたそうです。
もしこれが事実だとすれば会社にとっては損害です。雇用側の立場から、従業員がこのような行動をとった場合にどのような対応をとることが法的には認められているのか、弁護士の私が解説したいと思います。
もちろん、トイレ休憩は常識的な時間であればこれを禁止することはできません。ただ、あまりにも長時間のトイレ休憩は実質的に勤務をしていないことになり、労働契約違反となります。また、商品を食べることは当然許可されていませんので、これも労働契約違反となります。
■まずは事実確認を
このような事実が発覚した場合ですが、真っ先に行わなければならないのは事実確認です。本当にトイレ休憩から帰ってこなかったのか、商品を食べていたのかという事実があったか否かをしっかり確認しなければなりません。
杜撰な確認で処分を下した場合には、そもそもその処分が無効となる可能性があります。具体的には当事者の聞き取りの前に、同僚への聞き込みや社内に監視カメラのようなものがあればその画像チェック、商品の個数のチェックなどです。
これらの調査の結果違反事実が明らかになった場合ですが、その場合でもいきなり処分を下すことはできません。一度本人の弁明を聞く必要があります。
■正当な理由を確認する
長時間トイレに行っていたのは実はたまたま体調が悪いことが続いていただとか、そのような正当な理由が判明するかもしれないからです。もっとも、商品を食べたという場合は正当な理由などはないでしょう。
以上の手続きを経て、従業員に処分を下すことになりますが、いきなり懲戒解雇というのはやややりすぎでしょう。
某国のような恐怖政治を敷こうというのであればともかく、そうでなければいきなり懲戒解雇ということであれば他の従業員の影響が大きすぎます。
会社の被害の程度にもよりますが、初めは厳重注意等の処分で済ませ、それでもなお同様のことが繰り返されるのであれば、減給や出勤停止、場合によっては解雇という手段もやむを得ないでしょう。
■一番メリットがある方法は
とはいうものの、やはり経営者側と従業員側は信頼関係が第一です。
普段からコミュニケーションをしっかり取り、仮にこのようなことが起こっても、話し合いによって穏便に解決し、本来の会社の生産性を取り戻すような取組みを進めることが、従業員にとっても会社にとっても一番メリットがある方法ではないでしょうか。