サッカーのワールドカップが、日本時間の6月13日に開幕しました。
もし、審判が意図的に誤審をした場合、さらには、審判が一方のチームからお金をもらってそのチームに意図的に有利な判定をした場合に犯罪が成立するのか、について解説していきたいと思います。
■Jリーグの試合には特別法が適用される
Jリーグの試合は、「TOTO」というスポーツ振興くじの対象となっていますので、八百長を防止する目的で、試合に出場する選手や審判には「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」という法律が適用されます。
■意図的に誤審をした場合は?
スポーツ振興投票実施法では、偽計又は威力を用いて試合の公正を害すべき行為をした者は、3年以下の懲役または200万円以下の罰金が処せられると規定されています(同法41条)。
そのため、審判が、意図的に(わざと)誤審をすることは、偽計を用いて試合の公正を害する行為といえますので、同法に違反することになります。
■お金をもらっていた場合は?
また、スポーツ振興投票実施法では、審判が、試合に関して、賄賂をもらって不正な行為をした場合には、5年以下の懲役に処せられると規定されています(同法37条)。
そのため、審判が、一方のチームからお金をもらって、そのチームに対して有利な判定を下すことは、賄賂をもらって不正な行為をしたといえますので、同法に違反することになります。
■実際に犯罪を立証することは難しい?
以上のとおり、Jリーグの審判が試合で意図的に誤審をした場合には、犯罪が成立しますが、審判が一方のチームからお金をもらって明らかにそのチームに有利な判定をしたという場合なら格別、微妙な判定や意図せずに誤審をしてしまう場合もあるので、実際に、審判が意図的に誤審をしたことを立証することはなかなか難しいのではないかと思います。
■ワールドカップではどうか?
スポーツ振興投票実施法は、日本国内におけるJリーグの試合について適用され、海外で行われる試合については適用されませんので、今回のブラジルでのワールドカップの試合には同法は適用されません。
もっとも、ブラジルでも同様の法律があるかもしれませんので、もしそのような法律があれば、意図的に誤審をした審判は、同法によって処罰されることになると思います。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)