ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されるというニュースが駆け巡りました。
「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い」とされる「絶滅危惧1B類」に指定されたということですが、絶滅危惧種に指定された事により、私たちの生活に何か変化は起こるのでしょうか?
■ワシントン条約と種の保存法
科学者らの団体である国際自然保護連合(IUCN)の指定自体は、何ら法的義務を生じさせるものではありません。
ただ、野生動植物の国際取引を規制したワシントン条約の保護対象選定において、国際自然保護連合の「レッドリスト」を重要な参考資料としているため、レッドリスト指定により、近いうちにワシントン条約がニホンウナギを規制対象として加える可能性が高くなります。
次回のワシントン条約締結国会議は2016年に予定されており、早ければそこでニホンウナギがワシントン条約の規制対象となるおそれがあります。
■ワシントン条約の規制内容
ワシントン条約の規制対象には3段階ありますが、同条約の保護対象になると、商業目的での輸出入が禁止されたり、輸出入に輸出国政府の許可証が必要となったりします。
これだけでも、海外からのニホンウナギ輸入手続がかなり煩雑となり(場合によっては輸出不許可)、海外からニホンウナギを輸入することが困難となります。
輸入に要するコストも大幅に増えるので、ウナギの価格が大きく上昇する可能性が高くなります。
■国内法の規制
ワシントン条約の保護対象になると、同時に国内法である「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」の規制対象となる可能性が高いです。
種の保存法の規制対象になった場合、国内に生息するニホンウナギであっても、売買取引、捕獲が原則として禁止されてしまい、研究目的でない限り、ニホンウナギを捕獲することができなくなります。
もちろんウナギ漁そのものができなくなる事態もあり得ます。
これからの暑い季節、ウナギを食べて精力をつけたいところですが、近い将来、大幅なウナギ価格の上昇があると、心配ですね。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)