中国・武漢で発生し、全世界へと広がった新型コロナウイルス。日本でも感染者が広がっており、治療法が確立されていないことから、不安が広がっています。
社会人の「働き方」にも影響
新型コロナウイルスは労働者の「働き方」にも大きな影響を与えることになりました。感染リスクの高い満員電車を減らすため、始業時間を遅らせる、テレワークを推進するなど、拡大を防止する試みがとられています。
一定の効果は出ているようですが、それでも感染者は出てしまっている状況。当然感染した場合、会社に出勤することはできなくなってしまい、自宅での療養や、重篤化した場合は入院することになります。
勝手に欠勤や有給にされるのは…
新型コロナウイルスに感染し出勤できなくなった場合「どう扱うのか」は、現状会社によって異なっている様子。インフルエンザ同様「出勤停止」が基本だとは思いますが、「有給休暇」や「欠勤」にする会社もあると聞きます。
好んで感染しているわけではないですから、有給休暇を減らされるのは困りますし、欠勤にして給与がもらえないとなれば、生活できなくなってしまいます。新型コロナウイルスのような重篤な病気に冒され、出勤できなくなった社員を「有給休暇」や「欠勤」にすることに問題はないのでしょうか?
法律事務所あすかの冨本和男弁護士に質問してみました。
措置に問題は?
冨本弁護士:「欠勤は事実ですので欠勤とすること自体に問題はありませんが、有給扱いにするのは問題です。有給は「年次有給休暇」の略ですが、要は、休んでもその日の分の給料がもらえる休暇のことです。有給は、労働者が人間らしい生活を送るために、一定の期間継続して勤務した労働者に認められています。
有給は、原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものとされています(労働基準法第39条5項)。したがって、会社の方が、労働者の意向を無視して一方的に有給扱いにするのは問題です」
不当性を訴えることは可能?
労働者の意思に反して欠勤や有給休暇扱いとされるのは、やはり納得がいかないもの。不当性を訴えることはできないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞くと…
冨本弁護士:「欠勤とすること自体に問題はありませんが、欠勤とした日の給料等の扱いについては、別途検討する必要があります。会社の方に責任のある休業の場合、会社は、労働者に対し、休業期間中の休業手当を支払う必要があります(労働基準法第26条)。休業手当は、労働者の最低生活の保障を図るための手当です。
例えば、感染したかどうか明らかでないにもかかわらず、発熱したことだけを理由に休業させたのであれば、安易すぎる判断であり、会社の方に責任のある休業として休業手当が支払われるべきではと考えられます。
これに対し、例えば、検査の結果感染が明らかとなっているか、発熱だけでなく、感染者と接触した等といった状況から感染が強く疑われるような場合、会社の方に責任のある休業とまではいえず、労働者は、不当性を訴えることが難しくなると考えます」
泣き寝入りせず声を上げよう
緊急事態のためわからないことも多く、会社の決定に渋々従っている人も多いと思われますが、労働者にも権利があります。納得がいかない場合は、声を上げていきましょう。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)