昨今、相手の現在地を確認するためGPS(全地球測位システム)付きのスマートフォンを携帯させ、逐次所在を確認する夫婦が増えていると聞きます。
お互いが納得していればいいのですが、相手に無理矢理持たされているという人も、少なくないようです。
GPSで位置情報を管理されているAさん
Aさん(30代・男性)もその1人。妻が非常に嫉妬深いことや、仕事上接待などで夜遅くなることも多いこと、そして過去にAさん自身不倫をしており、それが発覚してしまったことからGPSでの位置情報管理を義務付けられました。
仕方がないと割り切ってはいるのですが、年中縛られ監視されているような気分なることから、止めてほしいと思っています。しかしGPSを持つまでの経緯がAさんの不倫だけに、「止めてほしい」と言い出せないそう。
離婚を決意
毎日のように「どうしてそんなところにいるの?」「そんなところにいないで早く帰ってきなさい」とメールが入る生活に疲れたAさんは、とうとう離婚を決意します。
しかし「GPSの位置情報を苦に離婚」というケースは聞いたことがないため、認められるのか不安を感じているそうです。GPS位置情報管理が正当な離婚事由として認められるのか。高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
正当な事由として認められるのか?
理崎弁護士:「夫婦での話し合いの機会も持たず、いきなり離婚を切り出しても離婚は認められません。離婚を切り出す前に、まずはGPSでの位置情報管理について夫婦で話し合うべきです。
夫としては、GPSでの位置情報管理を止めるよう妻に要求し、それでも妻が要求を拒絶するような場合であって、もはや夫婦での話し合いが不可能な状態にまで至った場合には婚姻を継続し難い重大な事由ありとして、離婚が認められる場合もあると考えます。
なお、妻が夫の同意を得ずに夫のスマートフォンを勝手に操作してGPSで夫の位置情報を管理しているような場合には、離婚事由として認められる可能性があるとともに、夫のプライバシー侵害として慰謝料の対象にもなりうるものと考えます」
思いやりを大切に
まずは話し合いを行い、それでも折り合いがつかなかった場合は「婚姻を継続し難い重大な事由あり」と判断され離婚事由として認められることもあるようです。
相手を愛し想うからこそGPSで管理したいと思うのでしょうが、双方が納得していない場合、負担に感じてしまうことがあります。そもそも位置情報を全て公開することは、プライバシーの侵害になりかねません。
GPS管理が悪いこととは言えませんが、拒否反応を持つ人も多いはず。配偶者への思いやりだけは、忘れないようにしてください。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)