計画運休してるのに帰らせてくれない会社…違法性はないの?

関東地方に甚大な被害をもたらせた台風15号。上陸が日曜の夜から月曜の昼までだったことや、鉄道各社が計画運休を発表したこともあり、帰宅難民になった人は少なかったようです。

しかし、なかには24時間営業店などで、帰宅手段を絶たれたにもかかわらず、仕事をしていた人もいたと聞きます。本来、社員が帰れないとなれば、帰宅させなければならないようにも思えますが、業務を優先させる経営者や管理者も、存在していました。

 

帰宅手段を失っているのに…

昨今台風や災害時に鉄道各社が計画運休をアナウンスするケースは多々あります。鉄道を利用して勤務している人間に、運休している状態で働かせることは、帰宅させないことにもなりますので、やはり異常に思えてしまいます。

帰宅手段を失ってまでも働かせることに、違法性はないのでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。

 

法的問題は?

川浪弁護士:「会社は、労働契約に基づき、労働者に対して業務命令権を有しており、労働者は、原則として会社の業務命令に従わなければなりません。もっとも、会社の業務命令が権利の濫用(民法1条3項、労働契約法3条5項)にあたるような場合には、同命令は違法・無効となるため、労働者は例外的に同命令に従わなくてもよいということになります。

今回のように、電車に乗らなくては帰宅できない従業員に対して、勤務を命じることは、当該従業員に対して、タクシーや徒歩での帰宅を余儀なくさせるものであり、場合によっては違法・無効となると考えます。具体的には、自宅が会社から遠く離れており、徒歩での出勤・帰宅に数時間を要するような場合に、タクシー代を使用者が負担しない前提で勤務を命じると、当該出勤命令は労働者に事実上の不可能又は相当な不利益を強いるものとして、違法・無効と判断される可能性があります(労働者の日給が1万円、タクシー代が片道3万円かかるような場合を想定してもらえればわかりやすいでしょう)」

 

安全配慮義務違反の可能性も

川浪弁護士:「また、そもそも、計画運休が確定していることを鑑みると、相当強度な台風が接近しているものと思われ、そのような中で徒歩での出勤を命じることは労働者の生命・身体を大きな危険にさらす可能性があります。そのため、労働者の自宅が会社から遠く離れていなくても、当該出勤命令は安全配慮義務(労働契約法5条)に違反するものとして違法・無効と判断される可能性があります。

「強度な台風」のようなやむをえない理由(会社の責めに帰することができない事由)で労働者が出勤して労務を提供することができなくなった場合、会社には労働者に賃金を支払う義務はありませんので(民法536条1項)、会社は無理に出勤を強要すべきではないでしょう(「出勤していないのに賃金を払わなければならず、会社が不利益を被る」ということにはなりません)。

むしろ、このような場合に無理に出勤を強要し、その結果、出勤途中に労働者が災害に巻き込まれた場合には、会社は、安全配慮義務に違反したとして、労働者に対して損害賠償債務を負担することとなるおそれがあることに注意しなければなりません。なお、会社は、仮に労働者を出勤させるとしても労働者の安全を確保すべく相当な対応(会社の費用負担でタクシーでの出勤を命じるなど)をとる必要があると考えます」

 

覚えておこう

台風のような強度の災害を引き起こす可能性があるなかでの勤務の強要や出勤命令は、法律違反となる可能性が高いようです。災害がないことを祈りたいものですが、そういうわけにもいきません。知識として覚えておきましょう。

 

*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

川浪 芳聖 かわなみよしのり

琥珀法律事務所

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