台風のなか「有志で車を出して出勤」「思いがあれば仕事できる」パワハラでは?

9月8日から9日かけ関東地方に上陸した台風15号は、千葉県を中心に甚大な被害を与えました。暴風雨となった時間が朝の通勤ラッシュと被ったこともあり、電車の運転が休止されたため、休みとなった会社も多かったようです。

家の屋根が飛んでしまうほどの暴風ですから、外に出れば命の危険もあります。社員の安全を考えれば、休みや出勤時間の遅れを認めることは当然のようにも思えます。

 

課長の発言にドン引き

ところが都内に勤務する上田さん(仮名)の会社は、そうではありませんでした。部長は「安全が確保されてからの出勤で良い」と通達したのですが、課長から「仕事への想いがあればこういうときでも出勤できるはずだ」などと、メールが回ってきました。

さらにそのメールには「あくまでも有志で」と前置きしたうえで、「車を出す社員を募集。その車に乗って出勤し、仕事への想いを見せようではないか」と書かれていました。上田さんは無視していましたが、社内では点数稼ぎとばかりに車を出し、出勤した社員がいたそうです。

 

パワハラにあたる?

無視したことについて何か咎められたというわけではありませんが、出勤した社員がいることを快く思わない上田さん。そもそも、課長の「思いがあれば出勤できる」という発言は、パワハラに当たると考えているそうです。

実際のところこのような発言と、「有志」といいながら車を出させ出勤を迫る行為はパワハラではないのでしょうか?琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。

川浪弁護士:「発言については、同発言だけで出勤を命令・強要しているとまでは言えないと思います。もっとも、出勤しなかったことを理由として労働者に不利益な処遇をした場合には、パワーハラスメントに該当する可能性が高く、労働者は会社と課長に損害賠償請求をする余地があります」

 

出勤を強要する行為は?

川浪弁護士:「『仕事への想いあれば出勤できる』という言動については、部長が自宅待機を命じている以上、その部下にあたる課長が「有志で」と称して出勤を強要することは認められず、別の上司の言動は会社の業務命令に違反するものといえます。

そのため、そもそも労働者は別の上司の命令に応じる必要はありませんし、課長が出勤を強要したとなれば、別の上司の業務命令違反(言動の不当性)を会社に訴えて厳重注意などの処分を求めることは可能と考えます。場合によっては(強要の程度次第で)、課長に対する損害賠償請求が認められる余地もあるでしょう。

台風の中で出勤を命じることが違法になるか否かという点については、台風の程度や公共交通機関の運行状況、労働者の自宅所在地などの事情によると考えます。強度な台風で労働者の生命・身体に危険が及ぶ可能性が高いと判断される場合には、当該出勤命令は違法・無効となる可能性が高いでしょう。

また、公共交通機関が運休しており、労働者の住所が会社から遠く離れていてタクシーでの出勤を命じることが現実的ではないという場合に、会社が徒歩での出勤を命じても同命令は違法・無効になると思います」

 

違法な指示に従う必要はない

台風のなか「思いがあれば出勤できる」「有志で車を」という言葉は、誰もが不適切な言葉であることは理解できるはず。しかしそれでも点数稼ぎや見えない「圧」によって、話を聞いてしまう人がいることも事実です。

苦しい立場もわかりますが、違法な指示に従う必要はありません。断固とした立場を取りましょう。

 

*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

川浪 芳聖 かわなみよしのり

琥珀法律事務所

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