大学生のMさんは飲食店でアルバイトをしています。主に皿洗いを担当しているのですが、店で当たり前のようにいわれている「あるルール」に、疑問と憤りを覚えています。
そのルールとは、皿やコップなどを割ってしまった場合、給与から300円を天引きするというもの。実際割ることは殆どありませんが、まったくないということもなく、実際に引かれたこともあるそうです。
憤りを覚えるMさん
Mさんは同僚に「これっておかしくないですか?」と相談してみましたが、そのほとんどは理不尽と感じていながらも、「クビになりたくないし、割らなければいいので我慢している」「バイトの身分だし仕方ない」と考えている人ばかりでした。
割ることを抑止するために必要なのかもしれませんが、社員やアルバイトの給料から修繕費を天引きするのは異常に思えます。仮に毎日割り続けた場合、給与を大幅に削られる可能性も否定しきれません、
店長やその上の管理者にこのルールを止めさせるよう話したいというMさん。修繕費を給与から天引きするやり家に違法性はないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に質問してみました。
修繕費の給与天引きは許される?
冨本弁護士:「修繕費の給与天引きは許されません。給与天引きは原則として許されません(労働基準法24条1項本文)。
労働者に給与を確実に受け取らせ,その生活に支障がないようにするためです。ただし、労働者が素直に弁償した場合に受け取ること自体は許されます。
しかし,労働者が弁償を拒絶する場合。徴収は難しいと考えます。労働者のミスは使用者の指導・監督のミスでもあり、使用者の労働者への責任追及が制限されるからです」
自ら弁償した場合は受け取れますが、給与から天引きを行うという行為は労働基準法24条に違反する違法行為となるようです。
雇用形態で違いは?
Mさんの同僚は「アルバイトだから仕方ない」と諦めていたそうです。正社員とアルバイトで取り扱いに差が出ることはあるのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞くと…
冨本弁護士:「正社員とアルバイトで結論を異にする理由は特になく、変わらないと考えます」
勇気を出して行動を
冨本弁護士によると、Mさんのケースは明らかに違法のようです。しかし、世の中には違法とわかっていながら、社員に罰などと称して給与天引きを迫る経営者が存在しています。
職を失う怖さから我慢してしまうケースもあるようですが、納得行かないことを我慢する必要はないのではないでしょうか? 勇気を持って、行動に出てみましょう。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)