恐喝や脅迫などの不当要求にさらされているご相談者様、ご依頼者様からのご質問に、よく「相手方に自分の身元を辿られる可能性はあるのか」というものがございます。
まず、免許証などの身分証明書の情報を把握されていた場合には、住所地の記載があるため、自宅を知られていると考えたほうが良いでしょう。
身分証明書でも社員証などであれば、職場は知られているかと思いますが、職場から直ちに自宅を調べるということはできないと思いますので、身元に関する情報は職場まで止まっている可能性が高いと思います。
もっとも、トラブルの種類によっては、職場を知られているということ自体が問題であるということもある訳ですが。
次に車のナンバーですが、弁護士であれば、車のナンバーから所有者情報を調べられる可能性があるものの、弁護士以外となると身元を辿るのは難しいでしょう。
美人局の事案などで、「ラブホテルに入った際に車のナンバーを見られているのだが大丈夫か…」というご相談をお受けすることがあるのですが、ナンバーを見られているだけならば、身元の特定という意味ではそこまで神経質にならなくてもよいかと思います。
銀行の口座情報も同様に、弁護士であれば、口座名義人の情報を調べることができる可能性がありますが、やはり弁護士以外となると難しいでしょう。
電話番号はどうでしょうか。
電話番号については、弁護士であれば、弁護士会を通じたキャリアに対する照会により契約者情報の開示を受けることができます。
その後、契約者の住民票を取得するなどして、現住所を辿られる可能性があります。
ただ、車のナンバーや銀行の口座情報と同様、相手方に「弁護士」がついたらという条件がありますし、仮に弁護士が代理人に就いたのであれば、家や職場に押し掛けるといったような無茶な方法は原則控えますから、そこまで心配なさる必要はないかと思います。
上記から、不当要求の相手方としては、手堅く、かつショートカットできる方法で皆さんの住所という最も知られたくない情報を手に入れようとしてきます。
その方法は、冒頭に申し上げた身分証明書の記載事項の確認です。
身分証明書を出せと言われても断りましょう。
また電話や車のナンバーからの調査に一定のハードルがあるとはいえ、こちらの個人情報は可能な限り渡さないほうが無難です。
こちらの個人情報を渡さずに対応するのであれば、やはり弁護士を代理人に立ててしまうのが良いでしょう。
皆さんはそれ以上直接の対応をする必要はなくなります。
当然、身元に関する情報を必要以上に取られることはなくなる訳です。
不当要求においては、様々な揺さぶりをかけながら、法的に根拠のない請求や、法的に過大な請求を通そうとしてきます。
その際に、身元に関する情報を押さえられていることは、こちらに不利に働く可能性が高いと言えます。
その意味では、なるべく早い段階で代理人である弁護士に丸投げをしていただいたほうが良いかと思います。
*執筆弁護士:若井 亮(若井綜合法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)
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