IT業界で横行する「間に会社を挟む」契約 法的問題は?

IT業界ではシステムエンジニアやプログラマーが、Aという会社に所属していながらB社の社員としてC社に紹介され、C社の社員としてDという顧客の現場で作業をするケースがあります。

かなり複雑な契約形態です。

間にいろいろな会社が入ると、休暇を取ることも難しくなります。

また、自社の社員ではないことから「商品」と考えられがちで、フォローもおろそかとなり、過重労働やうつ病発症の要因とも指摘されています。

A社の社員でありながら、間に会社を挟み最終的にC社社員として客先で働くという勤務体系。

このようなことがなぜ許されるのか疑問に思ってしまいます。

また、違法性はないのかも気になります。

琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。

 

弁護士の見解は?

川浪弁護士:「システム開発の現場(客先)に自社のSEを提供して常駐させることで客先から対価を得る契約は、「システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)」と呼ばれています。

この契約の法的性質についてですが、一般的に、仕事の完成(成果物)が約束されるものではなく、提供するSEの能力や時間数に応じて報酬が支払われるものですので、準委任契約(民法656条、643条)に該当します(なお、仕事の成果物に対して報酬が支払われることとなっている場合には請負契約(民法632条)に該当します)。

この契約形態自体は違法ではありませんが、提供するSEに対する指揮命令権はあくまで提供する会社にあることが必要です。

仮に、提供される会社(客先)がSEに対する指揮命令権を有するとなれば、法律上は「労働者派遣契約」に該当しますので、SEを提供(派遣)する会社は、労働者派遣法上の各種要件を満たして厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。

労働者派遣法上の要件を満たしていないにもかかわらず、実質的に「労働者派遣事業」を行っている場合には、同派遣法に違反することとなります。

これは世間で「偽装請負」と呼ばれている問題です。

労働者派遣契約の場合には、派遣先の会社も派遣元の会社とともに派遣労働者に対して一定の責任を負担することになりますし、そもそも、派遣元の会社が労働者派遣法上の許可を得ていなければなりませんが、これらを潜脱するために「偽装請負」が行われているのが実態のようです」

 

複数の会社が間が入ることに問題は?

川浪弁護士:「次に、複数の会社が間に入ってSEを供給する契約についてですが、これも上記と同様に、指揮命令権があくまでSEを雇用している会社にある場合には違法ではありませんが、指揮命令権が提供先の会社にある場合には「二重派遣」となり、職業安定法や労働基準法、労働者派遣法に違反することとなります。」

 

拒否できる?

間に会社が入る契約に抵抗を感じる人も多いと聞きます。

自分の務めるシステム会社がこのような労働形態を拒否することはできないのでしょうか?

琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。

川浪弁護士:「上述したとおり、SES契約自体は違法ではありませんが、指揮命令権は提供元の会社に存することが前提になります。

したがって、労働者は、提供先の会社からの指揮命令を拒むことができます(従う義務はありません)。

また、労働の実態が労働契約締結の際に明示された労働条件と異なっている場合には、労働者は即時に労働契約を解除することもできます(労働基準法第15条第2項)」

 

違法ではないものの…

間に会社が入る「SES契約」は、合法とされていますが労働者の精神的負担が増す要因になっているようです。

また、「そのような勤務形態とは聞かされず、会社に入り事実を知らされた」という事例もあります。

少なくとも入社の際企業は「SES契約」があることを労働者に説明し、理解を得る必要があるのではないでしょうか。

 

*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

川浪 芳聖 かわなみよしのり

琥珀法律事務所

東京都渋谷区恵比寿1-22-20 恵比寿幸和ビル8階

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