身内に不幸があった際、学校や会社を休むことを「忌引き」といいます。学生や会社員に保障されている権利で、通夜や葬式に参加するために使うことが一般的です。
両親はもちろん、祖父や親族などが他界したとなれば、仕事に手がつかなくなることもあるでしょうし、現場に駆けつけたいと思うのは当然のこと。忌引きはそんな労働者の気持ちを汲んだもので、素晴らしい制度といえます。
もちろん使う機会は訪れないことが望ましいのですが…。
忌引きを断られたKさん
会社員のKさんは、地方に住んでいる祖父が亡くなり、失意のどん底に落ちます。一刻も早く祖父のもとに寄り添いたいと、会社に忌引きを申請しました。
ところが返ってきた答えは、「一緒に暮らしていない祖父の死去には与えられない」というもの。空気を読んだ上司が「有給で休んでいいよ」と声をかけてくれたため揉めることはなかったのですが、忌引きの規定について大きな疑問を持ちました。
他の人に聞いてみると、「うちは認められた」「あなたの企業はブラックなんじゃないの?」といわれ、会社によってルールが違うことを実感し、モヤモヤしたものを感じてしまったそうです。
忌引きについて法的な規定はあるのか? そしてKさんの会社はなぜ申請を却下できたのか? 法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いてみました!
断ることは許されるのか?
冨本弁護士:「忌引き休暇を要求する法令はなく、許されるかどうかは就業規則の内容次第です。就業規則というのは、雇い主が仕事場における労働条件やルール等を定めたものです。
就業規則で定めた内容は、労働契約の内容となり、使用者も守らないといけません。就業規則で忌引きを認めていないか、一緒に住んでいる場合に限って認めている場合、法令違反ではありません。
しかし、「配偶者、子または父母が死亡したとき」に限定をつけず忌引きを認めている場合、就業規則に違反しますので許されません」
法的に明確なルールはない
忌引きは社員として当然の権利だと思われますが、冨本弁護士によると休暇を要求する法令などはなく、ルールはすべて会社が個々に定めた就業規則によって決められます。
Kさんの会社は、忌引きについて「一緒に暮らしていない祖父」の死去について認めておらず、それが就業規則に明記されており、社員も形式上納得しているとされているため、そのことに違法性はないとのことです。
少々納得がいかない気もしますが、忌引きは会社が独自に定めているもので、「明確にこうしなければいけない」というルールはないため、企業によって取り扱いが微妙に異なるのですね。
*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)