大学生のTさんは、バイト先に激しい憤りを感じています。その理由は、店長とパート女性のW不倫。しかも女性はその事実を自慢気に語っており、待遇面でも明らかに「贔屓」されているのがわかるとのこと。
職場はW不倫のせいでかなり雰囲気が悪くなっていて、辞める人も増えているそうです。責任ある立場でありながら、パートに手を出した店長に嫌悪感を持っており、奥さんに密告することを考えています。
奥さんに密告しようとすると…
そんなTさんですが、ほかのアルバイトに相談すると、「密告したら訴えられるかもよ。やめたほうがいいよ」と制されたそう。Tさんは「不貞行為を暴き、奥さんに伝えることが訴えられるなんておかしい」と怒りを隠せません。
不貞を配偶者に伝えることは本当に訴えられ、損害賠償の対象となってしまうのでしょうか?高島総合法律事務所の理崎智英弁護士に見解を伺いました。
損害賠償の対象になる?
理崎弁護士:「まず、店長とパート社員との不倫によって直接的な被害を受けているのは、店長の妻とパート社員の夫です。Tさんは嫌な思いをされているかもしれませんが、法律的には何も損害を被っていないということになります。
なお、仮にTさんが何らかの損害を被っている場合には、店長よりも立場の上の人に報告して改善を求めるべきであって、不倫の事実を店長の妻に密告する必要性もなく、その手段も相当とはいえません。
上記の通り、不倫の事実を店長の妻に密告することには必要性も相当性もないので、Tさんの行為は、店長あるいはパート社員のプライバシーを侵害したとして、損害賠償の対象になる可能性はあります。」
見て見ぬふりをするしかない?
少々納得がいかない気もしますが、不倫の事実を何も知らない配偶者に伝えることは、法律的に「必要性も相当性もない」と判断され、逆にプライバシー侵害となってしまうようです。
憤る気持ちもわかりますが、自分が被害を受けていない限り、他人の不倫に口を出すのは得策ではなさそう。「いつかバレる」のを待つしかありませんね。
*取材対応弁護士: 理崎智英(高島総合法律事務所。弁護士登録以来、離婚や不倫問題を中心に取り扱っており、多数の解決実績がある)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)