9月30日、関東地方に台風24号が接近。これを受けたJR東日本は、同日午後20時から一部の路線で全面運転見合わせの措置を取りました。
経営者からは不満も…
この件については「早く帰れた」「事前予告で対策が立てやすくなった」とおおむね好評でしたが、スーパーや飲食店の経営者からは「売上が減った」と不満が上がりました。
駅前の商業施設は、電車が止まってしまえば当然人が来なくなってしまいます。小さな飲食店になると、「売上ゼロ」なんてことにもなりかねません。
いくら台風だからとはいえ、勝手に運行を止めてしまうのは、納得がいかないもの。JR側に損害を請求することはできないのでしょうか?
銀座さいとう法律事務所の齋藤健博弁護士に見解をお伺いしました。
JRに損害賠償を請求できる?
齋藤弁護士:「実は運送契約を締結すると、約款といって、自動的に適用される規則があります。運送契約締結では、約款に記載された事項を事前に承諾していることを前提としています。
JRの場合、この約款は旅客営業規則という名で定められています。旅客営業規則によると、各種乗車券を使った乗車に対する対価として運賃が必要であることが読み取れます。
これを踏まえると、台風による運休の際には損害賠償請求できて然るべきとも思われるかもしれません。しかし、旅客営業規則には、運行不能・遅延に関する以下の規則も定められています。
(列車の運行不能・遅延等の場合の取扱方)
第282条
旅客は、旅行開始後又は使用開始後に、次の各号の1に該当する事由が発生した場合には、事故発生前に購入した乗車券類について、当該各号の1に定めるいずれかの取扱いを選択のうえ請求することができる。
ただし、定期乗車券及び普通回数乗車券を使用する旅客は、第284条に規定する無賃送還(定期乗車券による無賃送還を除く。)、第285条に規定する他経路乗車又は第288条に規定する有効期間の延長若しくは旅客運賃の払いもどしの取扱いに限って請求することができる。
(1)列車が運行不能となったとき
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ニ 第285条に規定する他経路乗車並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ホ 第287条に規定する不通区間の別途旅行並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ヘ 第288条に規定する定期乗車券若しくは普通回数乗車券の有効期間の延長又は旅客運賃の払いもどし
(2)列車が運行時刻より遅延し、そのため接続駅で接続予定の列車の出発時刻から1時間以上にわたって目的地に出発する列車に接続を欠いたとき(接続を欠くことが確実なときを含む。)又は着駅到着時刻に2時間以上遅延したとき(遅延することが確実なときを含む。)
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
ハ 第284条に規定する無賃送還並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
(3)車両の故障その他旅客の責任とならない事由によって、当該列車に乗車することができないとき
イ 第282条の2に規定する旅行の中止並びに旅客運賃及び料金の払いもどし
ロ 第283条に規定する有効期間の延長
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旅客は、旅行開始前又は使用開始前に、前項各号に定める事由が発生したため、事故発生前に購入した乗車券類(定期乗車券及び普通回数乗車券を除く。)が不要となった場合は、これを駅に差し出して、すでに支払った旅客運賃及び料金の払いもどしを請求することができる。
ただし、乗車券、自由席特急券、特定特急券、普通急行券及び自由席特別車両券にあっては、その乗車券類が、有効期間内(前売のものについは、有効期間の開始日前を含む。)のものであるときに限る。
上記のとおりです。よって、一定の場合の払い戻しはできるとしても、因果関係や損害の立証などの観点から、損害賠償請求は難しいでしょう」
不満に思う気持ちも理解はできますが、損害賠償を請求することは不可能なのですね。
まとめ
JRは今後も台風などによって運行に支障が出る場合は、「計画運休をする可能性ある」と話しています。そのことを踏まえた営業計画を練るほかありませんね。
*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)