【弁護士大量懲戒請求】渦中の北周士弁護士に直撃! 「ネトウヨが問題なのではない」

『大量懲戒請求』、この単語を聞いてピンとくる方は多いのではないでしょうか?

いわゆる、ネット右翼、通称『ネトウヨ』から、数名の弁護士に大量の懲戒請求が届いた問題。

実際に大量懲戒請求を受けた弁護士がツイッターを通じて、この件に対し物を申したり、嫌がらせとも取れる手紙が届いたことを写真つきで公開したり、とネットでも話題となっており、ちまたではさまざまな声が上がっています。

今回は、その渦中の弁護士のひとり、北周士先生に、『大量懲戒請求問題』について伺いました。

 

Q.今回の一件、先生に大量の懲戒請求が届いたきっかけや、経緯はどういったものだったのでしょうか?

A.朝鮮学校への補助金の交付に賛成したとして東京弁護士会の会長・副会長合計9名と、佐々木亮弁護士のもとに、大量の懲戒請求が突然届きました。佐々木亮弁護士は、「朝鮮学校への補助金云々にはまったく関与していない、身に覚えがない」といった旨をTwitterにつぶやいており、そのツイートに、「そんな(大量の懲戒請求が届く)のはおかしい」とリプライ(返信)をしたところ、私にも飛び火してきた、というのが始まりです。

詳しくは、Twitterにて佐々木弁護士が解説してくれているので、こちらをご覧ください。

佐々木亮弁護士ツイッターアカウント

 

Q.実際に先生が『朝鮮学校への寄付金交付』などに関わっていた事実はあったのですか?

A.ありません。

 

Q.現状、どれくらいの懲戒請求が来ているのでしょうか?

A.私のもとには960件、佐々木先生のところには約3,300件来ております。

 

Q.賠償請求はする予定ですか? する場合、何に対する損害賠償でしょう?

A.6月末を目処に訴訟を提起する予定でおります。なお、それに先駆けて謝罪の申し入れと和解を呼びかけています。

損害賠償の理由としては『虚偽告訴』及び『威力業務妨害』に基づく損害賠償請求となります。

 

Q.和解にも応じていますか?

A.応じています。詳しい数字は言えませんが、現時点で二桁ほどの方々と和解が成立しています。

 

Q.賠償金・和解金それぞれの金額はどのくらいを想定しているのでしょうか?

A.1名あたり5万円です。なお訴訟時の請求金額については30万円を予定しています。

 

Q.和解をした人から謝罪の表明などはあったのでしょうか?

A.ありました。主なものとしては「そのときは本当に日本が良くなると思っていた。」「時代を変えられるのではないかという高揚感があった。」などの表現が多かったと思います。

 

Q.ネット右翼、いわゆる『ネトウヨ』について先生はどうお考えですか?

A.ネトウヨと言ってもすでに意味としては多義的です。本件はネトウヨであること自体は問題ではないと考えており『匿名性を盾に特定の個人を集団で叩く』という行為に問題があると思っています。

 

Q.ネットでは、『匿名で発言できる』ということから『好き勝手言える』という意識が蔓延しているように見受けられ、今回の一件もその象徴だという印象を受けました。このようなネットリテラシーについて、弁護士の視点から、どんな危険性があると考えますか?

A.ネットリテラシーの問題ではなく、彼らは彼らなりに『自分の行いは正義である』『自分の行いは日本をよくするものである』と考えていたことが問題だと思います。

思想に関係なく『直接的に他者を加害する行動は問題である』という当たり前の点を認識し直す必要があると思います。ネットの匿名性と顔が見えない他者性はこの部分の攻撃のたがが外れやすくなると考えています。

ネットを通じた先の相手方も実在する人間であり、直接的な加害行為を行った場合ペナルティを受ける可能性があるということを認識すべきであると考えます。またネット上の『匿名性』は実際に特定をしようとすれば特定が可能なものに過ぎません。その点についても認識を持つべきだと思います。

 

Q.懲戒請求をしてきた人々に伝えたいことはありますか?

A.私を懲戒しても日本は特に良くならないと思います。他者の権利を制限しようとするときは自己にそれが跳ね返ってくる可能性が当然にあるということについては認識しておくべきだと思います。

特に専門家に対し懲戒請求をしようとするのであれば、それこそ専門家(弁護士)に相談をしてからするべきでしょう。

 

Q.事実上、誰でもできてしまう『懲戒請求』。改善の余地がはないのでしょうか?

A.弁護士法では

『何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる』

と規定されていることからすれば、懲戒請求権者を制限することは現行法上困難であると考えます。

しかしながら、現時点では架空人でも懲戒請求ができてしまうことからすれば①本人確認資料の添付、②実費(郵送代等)の予納程度は求めるべきではないかと考えています。

また、明らかに懲戒理由に当たらないものについては、本人に対する答弁書等の提出を求めることなく弁護士会が請求を却下する簡易却下の手続も設けるべきではないかと考えます。

 

Q.今回のことを受けて、先生のご意見

A.ほぼ上で述べた通りです。本件を思想の問題に『矮小化』することは避けるべきだと考えております。

 

編集部コメント

ネットが普及し、匿名でなんでも言えるようになってから、それなりの年月が経ちました。今回の一件には、多くの人々が関与するこのネット社会で、自身がどうあるべきか、自身の行いはモラルに反していないか、見つめ直すよい機会になったのかもしれませんね。

 

取材協力/北周士先生(北・長谷見法律事務所 企業・個人を問わず「困難な状況にいる方」がその状況を克服し、さらに先に進んでいくための手助けを担うことを得意とする弁護士。「特にこれから企業を発展させていこうとしている若手経営者及び先代が育て上げた企業を引き継ごうとしている若手経営者の活動をお手伝いする業務に注力しております。」)

執筆・取材/アシロ シェア法編集部(シェア法を盛り上げようと日々奮闘中。執筆いただける弁護士先生募集中です。)

画像提供/北周士先生

北 周士 きたかねひと

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞が関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

コメント

コメント