パートナーから性病をうつされた…相手を訴えることはできる?

セックスはいつも性病に感染するリスクと隣り合わせ。でも、信頼する恋人が相手だと、ついつい油断してしまうこともありますよね。

恋人としか関係を持っていないのに、性病にかかったら…そのショックは大きいものでしょう。心も体も傷ついて、100年の恋も冷めるどころか、憎しみまで生まれてしまうかも。

「訴えてやる!」と言いたくなるのも当然でしょう。

では、実際に慰謝料を請求することはできるのでしょうか?

 

■性病をうつしたら犯罪?

性病に感染していると自覚しながらセックスをし、その結果相手に性病をうつした場合、厳密に考えていくと、刑事法上は傷害罪に該当する可能性があります。

これは、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と、決して軽いとは言えない罪ですが、実際にこれで起訴に至ることは考えにくいでしょう。

そもそも、いわゆる強姦(正確には強制性交等罪)ではなく、双方が同意したうえでそのような行為に及んでいるのであれば、これを罪として処理されることはまれなのです。

もちろん、自覚をしていない状態で性病をうつしてしまった場合は、傷害罪のような故意犯ではなく、過失傷害罪が成立し、30万円以下の罰金を受ける可能性はありますが、これも傷害罪同様、可能性としては低いでしょう。現に起訴されたケースは聞きません。ただし、以下のようなものは存在するのでご紹介しておきます。

2014年に、エイズウイルス(HIV)に感染していると自覚していた男が5人の女性を強姦したという事件です。

参考: 「エイズ感染」告知後に5人をレイプ 失意が生んだ戦慄の犯行手口(週刊現代)

エイズウイルス(HIV)に感染したことで自暴自棄になったことで及んだ犯行だと言っていますが、あまりにも卑劣でショッキングな犯行。結局男は強姦罪(現 強制性交等罪)などの罪が成立し、情状を考慮しても懲役23年の実刑と判断されました。

ただし、単に性病であることを知りながら性行為をしていたというより、強姦致傷、住居侵入、窃盗など悪質な行為を何件も行っていたことが判断の肝にあると言えるでしょう。以下で説明していくように、このような事件は、金銭賠償で解決されることがほとんどであるといえます。

 

■性病をうつされた場合の慰謝料?

そもそも、一口に性病と言っても、症状の軽いものから重いものまでさまざま。それに応じて、治療にかかるお金や期間も変わってきます。当然ながら、慰謝料の金額も大きく変動します。一生完治しない病気もあるわけですから。

医学上、女性が性病に感染した場合不妊につながるリスクも。うつされた病気が原因で不妊になった場合は慰謝料が高額になることもあるでしょう。

ですので、単純に慰謝料金額は?と言われても「ケース・バイ・ケース」としか答えようがないのです。

ただしそれでも、過去の裁判例などは参考になるでしょう。たとえば、東京地裁において平成28年 6月29日に下された判決。

インターネット上の婚活サイトに会員登録した原告が、同サイトで独身(未婚)として会員登録していた被告と知り合って多数回にわたって性交を伴う交際をしたところ、被告から同交際中にクラミジア(本件性病)をうつされ、かつ、同交際終了後、被告が既婚者であることが判明したなどとして、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案。

原告は、被告から本件性病をうつされたと認められるとするとともに、被告は、故意に自らを独身者と偽ることによって原告を欺いて本件交際をしたと認められるとした上で、被告が原告に本件性病を感染させたことについての慰謝料額を30万円、被告が原告の性的自由を侵害したことについての慰謝料額を40万円と認定したほか、弁護士費用7万円も相当因果関係のある損害と認めて、請求を一部認容した事例があります。

請求金額としては300万円であったようですが、一定の慰謝料を認容しているケースと指摘できるでしょう。

 

■ 慰謝料を請求するには?

まず、医師の診断を受け、診断書をもらうこと。これで損害部分は立証ができましょう。問題は、因果関係です。というのは、その人が原因となり、性病に感染したという結果が生じたと即断できる領域の問題ではないからです。とはいえ、交渉で話がまとまらなければ、裁判となります。

そもそも、慰謝料を請求するには、うつした人(加害者)がうつされた人(被害者)にうつしたことを立証する必要があります。仮に、しかし、その人としか性行為をしていないとしても、性病にかかった帰責性は、被告にある、また、もっぱら被告にあることを確実に証明することはとても難しいでしょう。

そこで、「性病にかかったみたい…。」といった内容のメールやLINEが残っていれば、その証拠をもって、弁護士に相談してみるのもいいでしょう。弁護士は、今ある証拠を元に証明することを得意としていますので、きっと力になってくれるはずです。

 

■風俗店でうつされた場合は?

風俗店であっても、同様に傷害罪・過失傷害罪の成立する法律上では可能性はあります。慰謝料請求をすることもありえるといえばありえるのでしょうが、風俗店を利用する、ということは、性病にかかるリスクがある、ということを踏まえて利用しているとみられるでしょう。ここでは、仮に慰謝料を請求したとしても、過失相殺(どちらにも過失がある)としてなる可能性も指摘すべきです。ほかにも、加害者を特定する、また、すでに指摘した因果関係を立証するのは極めて困難でしょう。

「泣き寝入りではないか」と相談を受けたことはありますが、もう一つ指摘すべきこととして、これを請求することによって当該業態を利用した性交渉の事実が明るみになり、たとえば離婚問題などの紛争に拡大してしまうリスクがあることは認識しておく必要があります。

 

■まとめ

もし、性病をうつされてしまったら、その相手を罪に問う…ということは難しいとしても、慰謝料の請求はできるようです。

不特定多数の人と性行為をしたり、風俗店でサービスを受けたりすると、当然ながら性病に感染するリスクが格段に上がるといわざるをえません。「風俗は浮気じゃない!」と考える人もいるかもしれませんが、それを浮気としないとしても、大切な恋人に性病を移すリスクがあるということは理解しておくべきでしょう。

もしうつされてしまったら、泣き寝入りする必要はありません。まずは弁護士に相談してみましょう。

 

*取材協力弁護士: 虎ノ門法律経済事務所 池袋支店 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に多く乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)

*取材・文:アシロ シェア法編集部(シェア法を盛り上げようと奮闘中。監修・執筆いただける弁護士先生大募集中です。シェア法ライターも募集中。)

*画像はイメージです(pixta)

 

齋藤健博 さいとうたけひろ 弁護士

虎ノ門法律経済事務所 池袋支店

東京都 豊島区南池袋2-12-5 第6.7中野ビル7階B号室

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