初夏の風が吹き野外での遊びが楽しい季節になりました。ここ数年、外でのレジャーとして増加し、定着したのがフードフェスティバル。人気店や地方の名店などが一堂に会すことで、普段は行けないお店の料理を各種楽しむことができます。
ところが、4月頭に地方で開かれたあるフードフェスティバルでは、来場者数が極端に少なく、出店者が相次いで途中で引き上げたそうです。このような場合について、銀座さいとう法律事務所の齋藤健博弁護士にお聞きしました。
■出店料の返金はありえる
飲食店がフードフェスティバルに出店したが、イベント自体の来場者が少なく、まったく収益がなかった場合、事前に支払った出店料を返金してもらうことは可能でしょうか?
齋藤弁護士「返金の余地はあります。ただし、大きなハードルとして立ちはだかるのは、契約時の取り決めがないことです。契約自体は締結しているようですので、その書面がある場合には、書面の記載が重要でしょう。
契約書に入場人数についてなんら保証がない場合には、契約締結した側の責任となります。出店者は入場者数を予見して、それでも出店するかを決定するのが原則です。そうすると、損害賠償請求や債務不履行責任を追及できないとも思われます。
それでも、たとえば申し込みの勧誘段階(これを申し込みの誘引といいます)で、主催者側が積極的に『○○人くらいの入場者数は絶対に保証できますよ』などと話をしていれば、期待が生じていますから、前向きな交渉の余地は生じるでしょう。」
例えば、主催者側から「1日に最低2000食用意するように」などの指示があれば、それだけの来場者数を保証したようなものです。
齋藤弁護士「いずれにせよ、まず大事なのは契約書。このような事態になったときのことについて記載があるかどうかです。契約書にそのような項目がないのなら、それを指摘したり確認したりししなかった出店者の責任となります。」
損害賠償はどこまでできる?
売れなかった食材代や人件費、出店のために店舗を休業したことなどの損害賠償などを請求することはできますか?
齋藤弁護士「これは損害の範囲内がどこまでか、という難しい問題です。
本件では、休業損害が因果関係ある損害かと問われると難しいです。理由は、場合によってはこのような事態が生じることも織り込みで契約関係に至ったと考えられるからですね。
このような事態にならないよう、契約段階でしっかり保証条項などを組んでおくのはひとつの選択肢でしょうね。」
人気のフードフェスティバルですが、たくさんのイベントが開催されている現在、集客が分散されてしまうのもいたしかたないこと。出店する際は様々なリスクを踏まえ契約を考えるとともに、きちんとした契約書面を作成することが重要なのです。
*取材協力弁護士: 銀座さいとう法律事務所 齋藤健博弁護士(弁護士登録以降、某大手弁護士検索サイトで1位を獲得。LINEでも連絡がとれる、超迅速弁護士としてさまざまな相談に対応。特に離婚・男女問題には解決に定評。今日も多くの依頼者の相談に多く乗っている。弁護士業務とは別の顔として、慶應義塾大学において助教も勤める。)
*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)
*画像はイメージです(pixta)