「押し紙」って何?新聞が配達されずに捨てられちゃってる?

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『新聞販売店は、新聞発行元から新聞を仕入れ、読者に配達しています。近年、新聞発行元から当社の読者の数を超える新聞を仕入れてくれと言われます。その割合が年々増加し、今では仕入れた新聞のうち30%も配達せず、廃棄せざるをえない販売店もあるとのことです。これって法的には問題ないのでしょうか。』

このようなご質問を受けました。

『新聞社崩壊(畑尾一知著、新潮新書)』でも述べられていますが、新聞読者の減少は新聞発行元の経営にも大きく影を落としております。これが新聞販売店へのしわ寄せになっているのでしょうか。

ご質問にあるような新聞発行元が読者の数を大きく超える部数の新聞を、販売店に買い取らせることは「押し紙」と言われています。

「押し紙」の法的問題について考えてみたいと思います。

 

新聞社の対応は『優越的地位の濫用規制』に該当する

どのような条件で取引をするかは、基本的には当事者間の自主的な判断に委ねられます。しかし、取引上の地位が優越している一方の当事者が相手方に不当に不利益を与えることは、自主的な判断による取引、ひいては公正な競争を阻害するおそれがあります。

そこで、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(以下「独占禁止法」といいます。)2条9項5号は、このような優越的地位の濫用を、不公正な取引方法として禁止しています(独占禁止法19条)。これに該当する行為は、公正取引委員会(以下「公取委」という、)の排除措置命令の対象となります(独占禁止法20条)。

さらに、独占禁止法2条9号6号は、「前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの」も、不公正な取引方法に該当するとされています。

新聞業については、「新聞業における特定の不公正な取引方法(平成十一年七月二十一日公正取引委員会告示第九号)」(以下「新聞業特殊指定」という。)が指定されており、とくに第3項が、不公正な取引方法の類型として挙げられています。

押し紙の問題では、この新聞業特殊指定第3項を検討します。

 

新聞業特殊指定による押し紙の禁止

新聞業特殊指定第3項は、次のように規定しています。

3 発行業者が、販売業者に対し、正当かつ合理的な理由がないのに、次の各号のいずれかに該当する行為をすることにより、販売業者に不利益を与えること。
一 販売業者が注文した部数を超えて新聞を供給すること(販売業者からの減紙の申出に応じない方法による場合を含む。)。
二 販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること。

通常であれば、配達に必要な新聞部数にプラスして、破れてしまったり汚れてしまったりした場合の余部を仕入れる分には新聞販売店にとっては業務上合理的な仕入量ということになるでしょう。

一方で、配達に必要な新聞部数に比して30%をも多く仕入をすることは、販売店において合理的な仕入れ量をはるかに超えた部数と考えられます。その場合、販売店からの減紙の申出がなされたにもかかわらず、これに新聞発行元が応じなかったり(新聞業特殊指定3項1号)、新聞発行元が販売店に対して仕入部数を指示して注文させたり(新聞業特殊指定3項2号)したことがうかがわれます。

 

押し紙は独占禁止法上違法な取引である。

いずれにしても、新聞発行元の販売店に対する優越的地位に依拠して、業務上合理的な仕入量をはるかに超える仕入量の指定がなされ、販売店はこれを拒絶することができず仕入を行わざるをえない状況が「押し紙」と言えそうです。

そうだとすると、「押し紙」取引は、新聞業特殊指定3項の行為類型に該当するほか、優越的地位の濫用として独占禁止法上違法な取引であると言えるでしょう。

新聞読者の減少が言われているなかで、中小企業である販売店に不当な新聞部数の仕入れ量の強制というかたちでそのしわ寄せがいってしまっているとすれば、大変残念な事態です。

新聞という業態そのものが大変革の時代を迎えていることは間違いありませんが、不当な取引慣行の是正には、公取委の手腕が期待されるところです。

 

著者:センチュリー法律事務所 小林 洋介弁護士(一つ一つのご相談には個性があり、解決策もさまざまです。それぞれのご相談の事情や時代の変化に応じて、既存の解決策にとらわれず、新しい解決策を常に模索し、提案し続けていきたいと考えております。)

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小林 洋介 こばやしようすけ 弁護士

センチュリー法律事務所

東京都千代田区大手町1-7-2 東京サンケイビル25階

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