女性専用車両反対のための乗り込み活動は合法?

 

京王電鉄が京王線にて、平日深夜帯に痴漢防止の女性専用車両を設けるようになった2000年12月から、今年で19年。現在では全国の鉄道会社で導入され一般的なものになりましたが、女性優遇で男性差別的であると反対する声も依然存在します。

抗議する男性たちが女性専用車両に乗り込むという活動も行われ、今年2月には東京メトロ・千代田線の女性専用車両に数名の男性が乗り込み乗客とトラブルを起こし、電車が遅延したと報道されました。

このような抗議活動について、星野・木川・長塚法律事務所の木川雅博弁護士に伺いました。

男性による乗り込みは犯罪ではない

女性専用車両に強引に乗り込むという抗議活動は、何らかの罪に問われますか?

「『強引に乗り込む』という抗議活動の態様、程度にはよりますが、抗議活動を行うこと自体が民事上違法の評価を受けたり、何らかの犯罪に該当したりすることはありません。

なお、抗議活動とは関係なく、他の車両だと間に合わない、間違った、などの理由で女性専用車両に乗ったとしても、罪に問われることはありません。」(木川弁護士)

女性専用車両は鉄道会社が提供するサービスのひとつですから、法的な拘束力があるものではありません。暴力などを用いて誰かを傷つけるほどの強引な乗り込みでない限り、このような抗議活動自体を罪に問うことはできないのです。

 

電車を遅延させても罪には問われない?

それでは、この抗議活動によって電車の遅延などが起きた場合、この活動に携わった者は何らかの罪に問われたり、損害賠償を請求されることはありますか?

「抗議活動による列車遅延によって鉄道会社に損害が生じた場合、鉄道会社は、抗議活動を行った者たちに対して損害賠償請求を行うことが可能です。乗り合わせた乗客たちも同様に損害賠償請求をしたくなるかもしれませんが、こちらは請求できないといえます。

また、列車遅延や安全確認のための列車停止を引き起こした場合、その態様いかんによっては威力業務妨害罪が成立する可能性はあります。

最近、抗議活動中の車内で乗客が非常ボタンを押したケースがありましたが、非常ボタンが押された後も活動を継続していたら威力業務妨害により立件されていたといえましょう。その他、鉄道営業法38条違反や同法42条1項4号によって処罰・対処される可能性もあるでしょう。」(木川弁護士)

女性専用車両への乗り込み自体は犯罪ではありませんが、それによって遅延などが引き起こされた場合は、損害賠償請求の対象となったり、罪に問われる可能性があるのです。

この抗議活動に対抗したら?

それでは、このような抗議活動に対抗する場合はどうでしょうか? 乗り込んできた男性を女性乗客が無理やり引きずり下ろすなどして降車させた場合、女性乗客は何らかの罪に問われますか?

「立件するかどうかは別として、『無理やり引きずり下ろす』と暴行に当たるといえます。引きずり下ろした結果、けがをさせてしまったら傷害になってしまいます。」(木川先生)

たとえ抗議活動が過激化するなどして安全をおびやかされたとしても、手を出してしまってはいけません。駅員や鉄道会社に伝えるなどするべきでしょう。

そもそも痴漢という犯罪がなくなれば、女性専用車両は不要になるもの。あくまでも対症療法的な存在である女性専用車両の是非を問うのもいいですが、どうしたら痴漢をなくせるかという視点も重要ではないでしょうか?

 

 

*取材協力弁護士:木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野・長塚・木川法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)

 

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

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